496.会計の読み方 負債(流動+固定)
2020年12月24日
前回までは、「資産」についての読み方を説明してきました。 今回からは「負債」へ移ります。
「負債」というとどうしてもマイナスイメージを持ちますが、それは私たちが付けている色眼鏡ともいえます。
なぜなら、事業を始める場合には必ず「資金」が必要となるからです。
その「資金」が自己資金だけで都合つけば良いのですが、多くの場合はそれだけでは足りません。
そこで自己資金以外でも、資金調達をすることになります。
これこそが本来の「負債」という概念であり、それは事業に活かすために、他人から調達した資金という、
「負債」は本当はポジティブなおカネなのです。
けっして、「生活に困って・・」というようなネガティブなおカネではありません。
ただ、現実には多くの事業者が「事業資金に困って」という、後追い型の資金調達をしていることが多いため、
「負債とは、いわゆる借金のことです!」と説明されるわけです。
したがって、どこかで本末転倒しているような気もします。
本来「負債」は採算が取れ、儲かる事業投資という「プラスイメージ」なものなのです!
そして「負債」を常にプラスイメージとおりに活かすためにも、会計で自社の負債状況を読む必要があるわけです。
そこで今回は最初に、そんな誤解も多い『負債』全般について説明しましょう。
第7回 負債(流動負債+固定負債)の読み方
負債は「(事業)資金の調達」の一つです。それに対して資産は「(事業)資金の運用」でした。
また負債は自己資金以外に他人から調達した資金ですので「他人資本」ともいいます。それに対し自己資金は「自己資本」でした。
下図のように、多くの企業において「事業資金の7割から8割は他人資本である!」という状況です。
いずれも経済産業省「商工業実態基本調査 -中小企業の自己資本比率」より
そんな「負債」について、基本的なことを知りましょう。
1.負債とは
そもそも負債とは何なのでしょうか?
負債は確かに会社の借金など「マイナスの財産」ではありますが、貴重な資金の調達でもあります。
銀行から融資を受けるとか、仕入れた代金が未払いであるとかなど、返済義務があるものが『負債』といわれるものです。
貸借対照表(B/S)では右側に記載され、負債は『流動負債』と『固定負債』に分けられます。
負債とはマイナスの財産でもあるが、「資金の調達」でもある!
2.流動負債と固定負債
では、流動負債と固定負債はどのようにして分類されているのでしょうか?
『流動負債』と『固定負債』は、返済期限の長さによって分類されています。
短期のうちに返済期限がくる負債は『流動負債』に分類され、長期返済期限のものが『固定負債』に分類されます。
具体的には1年という時間軸で、流動負債と固定負債に分類されますので、「ワン・イヤー・ルール」といいます。
(1)主な流動負債科目
支払手形、買掛金、短期借入金、未払金、未払費用、前受金、預り金、借受金、仮受消費税、賞与引当金など
(2)主な固定負債科目
長期借入金、長期未払金、役員買入金、退職給与引当金など
流動負債と固定負債は「ワン・イヤー・ルール」で分けられている!
3.負債の運用目的
負債は、実は流動負債か固定負債かによって、その基本的な運用目的が決まっています。
これが非常に大事な負債の使い方の「常識」です!
(1)流動負債の運用目的
流動負債は返済期限が短いので、運転資金又は流動資産として運用すべきものです。
間違っても、設備投資など長期に運用するものに流用するようなことがあってはいけません。
(2)固定負債の運用目的
固定負債は返済期限が長いので、設備投資など、運用期間が長いものに運用します。
もちろん、運転資金や流動資産に運用しても差し支えはありません。
負債は流動負債か固定負債かで「その運用目的が決まっている」!
4.有利子負債と無利子負債
さらに負債は、『有利子負債』と『無利子負債』にも分類することができます。
(1)有利子負債
有利子負債とは、負債のうち「利息を支払う義務がある負債」のことをいいます。
たとえば、短期借入金、長期借入金、社債などが『有利子負債』に該当します。
(2)無利子負債
無利子負債とは、逆に「利息の支払い義務がない負債」のことです。
たとえば、支払手形、買掛金、未払金、預り金、前受金などが『無利子負債』に該当します。
5.まとめ
①「負債」は「資産」や「純資産」とともに、貸借対照表(B/S)を構成する要素の一つです。
②負債は、株主や会社以外の外部(他人)から調達した資金を表しています。
③B/Sの負債配列は、流動性の高いつまり返済期限が短い負債から、流動性が低いつまり返済期限が長い負債順に
記載されています。
④資金の調達である「負債」と「純資産」の違いは、返済義務があるかないかです。
その違いから、純資産は「自己資本」とも呼ばれ、負債は「他人資本」「外部資本」とも呼ばれます。
何度も申しあげますが、会計は、決算・税務申告のためだけにしている「事務」ではありません。
会計は経営判断を行えるために日々行っている「経営管理(マネジメント)業務」なのです。
いまほど経営に手腕が求められている時代はありません。
会計とマーケティングを駆使して常に経営を革新し、永続的に続く経営を目指しましょう。
戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。
そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。
-------------------------------------------------
インプルーブ研究所はITウェブサイト・マーケティング・経営会計で貴社の発展に尽力しています。
ぜひ、一度お話いたしませんか? お問い合わせはお気軽に コチラ から
-------------------------------------------------
これが2020年最後の「経営会計コラム」となります。新年は1月9日から再開します。
では皆さま、新型コロナ感染拡大に対処して、良いお年をお迎えください!