499.会計の読み方 未払金および預り金
2021年1月24日
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新型コロナ感染拡大、第2回目の緊急事態宣言と、経営環境は大きく変化し、そして厳しくなって来ている。
そんなときに必要になるのが、経営状況の羅針盤である会計を読み解きながら、経営の舵取りをすることだ。
ぜひ、実務的な会計の読み方を習得しましょう。
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今回のテーマは、『未払金および預り金』だ。
企業には前々回で見てきた仕入れに関する「未払い」のほかに、経費等に関する「未払い」がある。
また従業員への給与支給時に従業員から「預る」、社会保険料や源泉所得税などもある。
そんな『未払金および預り金』について、中小ビジネスにとっての実務観点から、見ていこう。
第10回 未払および預りの読み方
『未払金および預り金』は、負債中の「流動負債」に表示されている。
ということは、『未払金および預り金』はこれから近々に支払わなくてはならないものだが、「運転資金」として調達している
資金という性格もあるということだ。
まず、このことを再度認識しながら、未払金と預り金の運用そして返済のマネジメントをしていこう。
1 事業における「未払金」と「預り金」とは
(1)中小ビジネスにおける「未払金」とは
中小ビジネスにおける「未払金」は次の3つに分類される。
その1つが、前々回に説明した、仕入れにおける「未払い」だ。これには『支払手形』と『買掛金』があった。
2つめが仕入れ以外で、いちいち契約するのではなく単発的に発生する、支払期限が短い「未払い」だ。これを『未払金』という。
3つめが同じく仕入以外ではあるが、契約に基づいて継続的に発生する支払期限が短い「未払い」だ。これを『未払費用』という。
詳しくは、企業会計のルールである「企業会計原則」で定められているので、興味のある方はそちらを参照されたい。
なお、このルールは、利害関係者が正しく投資している会社の状況を判断するために定められているのだが、
一般の中小企業は上場企業のように、直接市場から資金調達はしていない。
したがって、あまりそれに準じて会計処理をする必要はないともいえる。
つまり、そんなに杓子定規に処理を行う必要はないということだ。
むしろ、それよりも中小ビジネスにおいては、「未払いの内容に応じて内訳を管理する」ということが大事だ。
なぜならそれによって、何が計画よりも増えているのか、資金繰り的にはどうなのかなど、多くのことが判断できるからだ。
未払いには『買入債務』と『未払金』『未払費用』の3種類があるが、
未払金と未払費用は内容で内訳管理することが大事だ!
(2)中小ビジネスにおける「預り金」とは
「預り金」とは、他人資本なので負債ではあるが、借金とはまた少し違ったものだ。
つまり、本人が支払う代わりに一時的に預り、期日が来れば本人に代わって支払うという性格のものだ。
これには次の2つがある。
1つは本人代わって納付する、社会保険料や源泉所得税である「預り」だ。これを『預り金』という。
これは必ず、期日内に納付しなければならない。
2つめは顧客から売上代金と一緒に預り、顧客に代わって納付する「消費税」だ。これを『仮受消費税』という。
この金額を把握するためには、会計を「税抜き経理」しなくてはならない。
預りには『預り金』と『仮受消費税』があり、両方とも期日内に支払うことが預かった企業の義務だ!
さて、そんな『未払金及び預り金』だが、それをどのように読めばよいのか?
読むといっても「いま未払い・預りがいくらある」とか、「昨年よりは減った・増えた」では読んだことにならない。
それは、ただ計算しただけに過ぎない。
では、どのように読めばよいのか? それは、多角的に『未払金及び預り金』を比較することだ。
多角的に比較して、会社の未払いと預りの状況を読み、経営的な判断をすることだ。
未払いと預りを読むとは多角的に比較し、その運用と決済について良し悪しを判断することだ!
では、具体的にどのようなものと比較して読めばよいのか?
2.未払いの増減をチェックする
まず、未払の増減状況をチェックしよう。
未払いは仕入れを除く「費用の未払額」なので、基本的には前年と同様か、できれば経営環境が不透明な中なので、
少しでも減らしたいものだ。
当月未払額90万円-前年同月未払額80万円=増減額+10万円
しかし「昨年より10万円増えているのか・・」で、終わってはいけない。
ここで活きるのが、未払いの内容に応じて行う「内訳管理」だ。
未払いの内訳管理をしていると、具体的に何が増えて、何が減っているのか、一目瞭然となる。
具体的にわかるわけだから、検証が可能となる。
増えるべき経費が増えているのか?
減らすべき経費が増えているのか?
それによって、同じ増加でも見え方が違ってくる。 それが、未払いの内訳管理の効果だ。
未払いを内訳管理すると、その状況がクリアに見てくる!
3.預り金の増減と、手元資金と比べる
次に預り金だが、預り金は、社会保険料と源泉所得税を本人から預かっているおカネだ。
(1)増減を見る
まず、その増減を確認しよう。
当月預り額100万円-前年同月預り額110万円=増減額△10万円
昨年と比較すると、10万円減っている・・。 この状況をどう読むのか?
経営は厳しい状況だが、しかし、この減額になっている状況は喜んではいられない。
なぜなら、預り金が減っているということは、給与支給額が減っているということだからだ。
いまは人件費をできれば高めていくことが、各経営者に求められている使命でもある。
むしろ、それをテコに「士気」を高めたいところだ。
預り金の減少は人件費の減少を示している。できれば上げることが経営者の使命だ!
(2)手元資金と比べる
もし、経営状況が苦しい状況であれば、手元資金とも比べておこう。
手元資金510万円÷(当月預り額100万円×2)=2.55倍
ポイントは、社会保険料は会社負担分も別途あるので、ザックリと2倍にするということだ。
源泉所得税は2倍にならないが、あまり細かいことは考えないで、それは「安全性」と捉え、ザックリと見てみよう。
これはどのくらいあれば「良い」とかいうことはないが、この事例の2.5倍程度では「かなり資金繰りは厳しい」ということが
自覚でき、判断できる。
4.仮受消費税は納付額の試算と、手元資金と比べる
仮受消費税とは、顧客から預かっている消費税だ。
(1)納付額の試算をする
会計を「税抜き経理」していると、この『仮受消費税』と、仕入や経費などで支払っている『仮払消費税』が常に計算できる。
そして、『仮受消費税』から『仮受消費税』を引き算すると、おおよその消費税納付額が計算できる。
仮受消費税960万円-仮払消費税480万円=概算消費税納付額480万円
最終的には決算整理や消費税の計算方式によっても若干異なってくるが、概算はこの計算をすることでいつでも確認できる。
消費税率は現在10%だが、納付額は想像以上に多くなり、中小企業の中では無意識のうちに仮受消費税を運転資金として
運用してしまい、消費税納付時に困っている企業が多いことも事実だ。
そうならないためにも、経理は税抜き経理を行って、常に概算の消費税納付額を確認しておくことは大事なことである。
消費税率10%時代、常に概算納付額を把握しておくことは最重要マネジメントのひとつ!
(2)手元資金と比べる
概算消費税納付額が把握できれば、次にマネジメントすべきことは納付資金状況だ。
(手元資金510万円÷概算消費税納付額480万円)-100=消費税納付余裕率6.25%
消費税納付余裕率が6.25%ということは、
いまの手元資金で何とか消費税は納付できるが、納付したなら、たちまち手元資金が無くなってしまうことを示している。
つまり、「手元資金が不足している」ということを示している。
したがって、この状況では「納税資金手当てを考える必要がある」ことを示している。
ある程度の企業はここまでは考えるが、さらに大事なことは「そのあと」だ。
「そのあと」のことを考えないために、厳しい経営を繰り返している企業が多くある。
「そのあと」のこととは、「借入金の返済計画」であり、かつ「増収計画」だ。
納税資金手当とは、「借入と返済」そして「増収計画」がセットである!
5.未払金および預り金を改善する方法
最後に、これら『未払金および預り金』を改善する方法について、簡単に触れよう。
(1)未払金および未払費用
1.内訳管理をして、それぞれの状況を掌握する。
2.基本的には前年と同額か、または前年削減とする。
3.執行する経費はメリハリをつける。
(2)預り金
1.預り金の方向性は、前年比アップそして人件費の増額である。
2.士気の向上は、付加価値(粗利)の向上につながり、人件費増額の余地を作ることにもつながる。
(3)仮受消費税
1.常に概算の消費税納付額を把握する。
2.概算の消費税納付額と手元資金とを比べる。
3.毎月の概算消費税納付額分を積立預金すれば、納税資金に困ることはなくなる。
4.納税資金手当は「借入」と「返済」、そして「増収計画」をセットで考える。
(4)経営の黒字化、高付加価値化
1.やはり、経営の「黒字経営化」が基本中の基本だ。
2.さらに、経営の「高付加価値化」を実現する必要がある。
これまでも何度か申しあげているが、会計は決算や税務申告のためだけにしている「事務」では、決してない。
むしろ、会計は会社経営の判断をするために日々行っている「経営管理、マネジメント業務」だ。
いまほど、経営者の『経営手腕』が問われているときはない。
会計と、そしてマーケティングを駆使して常に経営を革新し、永続的に続けられる企業経営を目指そう。
戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることだ。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしている。
しかし、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけない。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかない。
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