500.会計の読み方 固定負債

2021年1月31日

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新型コロナ感染拡大、第2回目の緊急事態宣言と、経営環境は大きく変化し、そして厳しくなって来ている。

そんなときに必要になるのが、経営状況の羅針盤である会計を読み解きながら、経営の舵取りをすることだ。

ぜひ、実務的な会計の読み方を習得しましょう。

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 さて、いよいよ負債の読み方も終わりに近づいてきた。 今回は「固定負債」だ。

固定負債とは、長期(1年超)にわたって返済できる負債のことだ。したがって、長く運用する資産の調達資金として最適だ。

そんな「固定負債」について、実務的な読み方を勉強しよう。

 

第11回 固定負債の読み方

1.固定負債とは

(1)長期借入金

 固定負債とは、「固定性の負債」という意味だ。

会計では「ワン・イヤー・ルール」で、流動性と固定性に分けている。

そんな固定性の負債である他人資本の主なものは、「長期借入金」と「役員借入金(あるいは長期未払金)」だ。

 ただし、長期借入金については、その中に1年以内に返済する部分もあるので、しっかりとした企業経営をするために、

その部分は流動負債の「1年以内返済長期借入金」に区分すべきことは、すでに説明したとおりだ。

いまだに「長期借入金」があって、かつ「1年以内返済長期借入金」が計上されていない場合は、管理会計志向でない証左だ。

しっかりとした経営をするためにも

長期借入金の1年以内返済部分を「1年以内偏在長期借入金」で管理することは大切だ!

 

(2)役員借入金

 役員借入金とは、事業資金不足を、オーナー経営者自身が資金提供しているものだ。

したがって、会社にとっては金利負担はなく、また契約書等に基づく返済期間や月々の返済額も定められていないことが多いので、

一部の金融機関などでは「自己資本」とみなしてくれることも多い。

 しかし一方、オーナー自身が資金提供しなければならないほど資金繰りは苦しいという見方もできるので、

けっして前向きな良い評価ばかり得られると限らない。そこで、役員借入金を「長期未払金」と表示している場合もある。

が、実態に変わることはなく、ほめられるものではない。問題の本質は「資金繰りが苦しくなっている」ということだ。

 事業から得られる資金だけでは足りなく、オーナー自身が資金提供しているわけだから、まさに赤信号が点滅していることを

自覚しなくてはならない。すぐにでも、経営改善の方向性を明確にし、具体的な経営改善に着手することが大切だ。

 役員借入金が多い企業パターンには、創業間もない企業が当初事業資金が足りなくなり、その部分をオーナーが資金提供している

場合もあるが、多くは戦後まもなく創業して、高度経済成長の波に乗り、成長した創業50年前後の企業に多く見られる。

高度経済成長期に得た財産を、経営環境の変化に対応できない現在の経営に投げ出している状況だ。

一時、大きな成功を収めたばかりに、経営の舵を切れない状況が続いていることが多い。

従前の成功は大いに称えられるが、いつまでも過去の成功体験だけでは、現在の経営には通じないことを客観的に知らなければ

ならない。 昔やってきたように、いまも変革に挑戦しなければならないということだ。

役員借入金は変革に挑戦しなくてはならないことを伝えている!

 

 さて、そんな固定負債だが、それをどのように読めばよいのか?

「いま固定負債はいくらある」とか、「昨年より減っている、増えてしまった」では読んだことにはならない。

多角的に他の項目と比較して、現状の状況を知り、経営的な判断をすることが大切だ。

 

 

2.設備投資と固定性調達資金を比べる

 固定負債とは、長期にわたって返済できる負債だ。

したがって、長く運用する資産の調達資金として最適であることは説明した。 そこに読み方のヒントがありそうだ。

 長く運用する資産とは何だろうか。それは事業における設備である、固定資産だ。それと比べてみることが大切だ。

また設備投資資金に適した資金は、固定性の調達資金である。固定性の調達資金とは、固定負債と自己資本つまり純資産である。

したがって、それを加えて比べてみる。

固定資産2500万円÷(固定負債2000万円+純資産1200万円)=固定長期適合率78.1%

固定長期適合率という名称は難しいが、名前に惑わされなず、考え方を知ろう。

要は、「設備投資は自己資本と長期返済ができる調達資金内で行いなさい」ということだ。

この場合、8割内程度で設備投資を行っているので、まずは資金調達に関しては適切だと判断できる。

これが100%を超えていると、超えた部分は短期返済資金で投資をしているので、問題だ。

 

 

3.設備投資と自己資金を比べる

 念には念を入れて、設備投資と自己資金を比べてみることも大切だ。

自己資金とは、つまり純資産だ。

固定資産2500万円÷純資産1200万円=固定比率208.3%

 これだと自己資金の2倍以上の設備投資をしていることになる。

一般の判断では、一生住み続ける住宅でも頭金は最低でも20%程度は必要だと言われる。つまり、固定比率500%だ。

事業の設備はずっとは使い続けられないので、そこから類推すれば最大でも200%程度だ。

とすると、いまの状況は目一杯と判断できる。

 

 

4.固定負債を改善する方法

(1)自己資金を増やす

 自己資金を増やすとは、繰越利益剰余金を増やすということだ。繰越利益剰余金を増やすには、やはり経営の「黒字経営化」だ。

 

(2)遊休固定資産の処分

 設備の稼働状況は思いのほか、変化がはげしい。もう動いていない設備、稼働の低い設備は思い切って処分することが大切だ。

黒字経営なくして、経営ナシ! 

 

 

5.まとめ

①固定負債とは長期(1年超)にわたって返済できる負債である。したがって長く運用する資産の調達資金として最適。

②長期借入金には1年以内に返済する部分もあるので、しっかりとした企業経営管理をするためには、その部分は流動負債の

 「1年以内返済長期借入金」に区分して管理する。

③役員借入金がある場合は、変革に挑戦しなくてはならないことを伝えている。

④固定長期適合率(固定資産と固定性資金調達額の比較)は100%が限度。

⑤固定比率は200%が限度。

 

 

 

何度も申しあげますが、会計は、決算・税務申告のためだけにしている「事務」ではありません。

会計は経営判断を行えるために日々行っている「経営管理(マネジメント)業務」なのです。

いまほど経営に手腕が求められている時代はありません。

会計とマーケティングを駆使して常に経営を革新し、永続的に続く経営を目指しましょう。

 

 

戦略を考えるにあたって重要なことは『思い込み』なるものを打ち破ることです。

私たちは思いのほか、思い込みに囚われて生活や仕事をしています。

そして、その結果が「いま現在である」ということを忘れてはいけないと思います。

違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。

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