11.財務分析とは何か
2009年8月4日
今回は「管理会計資料」の各論、第4回目です。今回からは「財務分析」について説明します。「財務分析」と一口に言いますが、たいへん大きなテーマです。表面的な説明に終始しても、皆さまの経営に役立ちませんので、この財務分析をシリーズ化して説明していきたいと思います。何回で説明が終えられるのか予想できませんが、がんばります。皆さまもぜひ、がんばってお読みいただき、皆さまの経営の一助になれば幸いです。
会計資料の数字だけを見ても、会社の問題や課題はわからない
毎月、会計事務所から試算表とか仕訳帳などが届きますね。もう8月に入りましたから、お手元には6月の会計資料があると思います。「えっ、ない?」8月に入っても6月の会計資料がないのであれば、これから6月の会計資料が届いても、まったく紙クズ同然じゃないですか。少なくとも1ヶ月遅れで、会計資料は欲しいですよね。
話しが横道にそれてしまいましたが、ちょっと会計資料を見てください。
「おっ、今月は少し利益が出たぞ」・・・①
「現金が少し減ったかな」・・・・・・・②
「今期はまだ赤字だな」・・・・・・・・③
「借入はまだ×××残っているのか」・・④
「売掛の回収が悪いな」・・・・・・・・・⑤ などがわかるかと思います。
①は、損益計算書、経常利益の貸方欄を見ればわかります。②は、貸借対照表、現金の借方・貸方並びに残高を見ればわかります。③は、損益計算書、経常利益の残高を見ればわかります。④は、貸借対照表、長期借入金の残高を見ればわかります。⑤は、貸借対照表、売掛金の借方・貸方並びに残高を見れば金額はわかりますが、悪いかどうかは、社長の印象であり、実はこれだけではわかりません。つまり、会計資料の数字だけを見ても、各勘定科目の残高はわかりますが、判断・評価はできません。
比べることが財務分析
ではどうすれば、判断・評価ができるのでしょうか?
それは数字を比べてこそ、初めて数字は意味を持ち始めます。例えば、生活の中で見てみましょう・・。
私は洗濯機が古くなったので、最新式のエコ対応洗濯機を20万円で買って、妻にプレゼントしたとしましょう。これ自体、特に問題はありません。妻も喜びました。しかし、その20万円をカードローンで借りて買ってしまいました。そのことを知った時点で妻から「なんでそんな無理してまで買ったの?」と抗議を受けます。
これを会計的に説明すれば、固定資産(洗濯機)20万円を短期借入金(カードローン)20万円で購入したことなり、これから毎月無理してまでも返済金と金利を現金で支払うようになります。固定資産20万円、短期借入金20万円と残高だけを見ても問題はありませんが、固定資産と短期借入金を比べて、初めて問題が発見できるわけです。財務分析ではこのような比較を、「固定比率」あるいは「固定長期適合率」で分析します。このように数字は比べてこそ、はじめて意味を持ち始めます。
財務分析の評価方法
次に財務分析の評価はどうすれば良いのでしょうか?
これには3つの評価方法があります。
①時系列比較
これは内部比較の一つであり、前年と比べ評価する方法です。前年と比べ良いか・悪いか判断でき、これを時系列に並べて見れば、会社の傾向が掴めます。また比べ方としては、前年同月比較(今年8月と去年8月との比較)、前年累計比較(今年期首から8月までの合計と去年期首から8月までの合計との比較)、移動合計比較(今年8月までの年間合計と去年8月までの年間合計との比較)の3種類があります。
②目標比較
これも内部比較の一つであり、目標(計画値・予算値)と比べ評価する方法です。計画と比べ課題が克服されつつあるのか、積み残されているのか判断できます。また比べ方としては、単月比較と累計比較とがあります。
③同業他社比較
これは外部比較であり、他社と比べ自社には問題があるのかどうか判断できます。同業他社値としてはTKC経営指標と中小企業庁指標とがあります。TKC経営指標であればキメ細かく比較することが可能です。
財務分析の類型
財務分析に関してはさまざまな類型があります。
「だれが分析をするのか」による分類としては、外部分析(経営者以外の立場から分析する)、信用分析(金融機関の立場から分析する)、投資分析(投資家の立場から分析する)、内部分析(経営者立場から分析する)に分類されます。「分析手法」による分類としては、実数分析(前年数値、他社数値等と比較する)、比率分析(構成比率や相互比率等を通じて行う)に分類されます。「分析角度(アングル)」による分類としては、収益性分析、安全性分析、効率性分析、成長性、生産性分析の5種類に分析されます。
次回は「財務分析シリーズ(2)」として、財務分析値の種類について説明します。どうぞ、お楽しみに!
インプルーブ研究所に参加されている会計事務所では、このような管理会計指導を巡回監査という業務を通じて皆さまの企業経営をサポートされています。
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