13.収益性分析の種類

2009年8月16日

今回は生産性分析に続き、収益性分析の種類についてです。

収益性分析とは
収益性分析とは、事業のために投下している総資本(自己資本と他人資本)に見合った収益を上げているかどうかを検証する財務分析です。主に総資本と売上高・利益を比べて判断します。

収益性に関する分析
(1)総資本利益率
この指標は収益性を検証するための財務分析の基本指標です。総資本とは事業のために調達し投下している資金のことです。事業に投下している以上、より多くの利益(営業利益または経常利益)を稼ぐことが好ましいといえます。米国ではROA(Return On Assets)と呼んでいます。
また、この指標は総資本回転率と売上高利益率に分解でき、総資本利益率が下がった場合は総資本回転率と売上高利益率に分けて原因を追求することができます。
(2)自己資本利益率
この指標は総資本のうちの自己資本と利益(営業利益または経常利益)を比べた指標です。考え方は総資本利益率と同様、事業に自己資金を投下している以上、より多くの利益(営業利益又は経常利益)を稼ぐことが好ましいといえます。米国ではROE(Return On Equity)と呼んでいます。
(3)総資本回転率
この指標は売上高と総資本を比べた指標です。同じ総資本の会社であれば売上高の大きい(総資本回転率が高い)会社の方が、収益性が高いといえます。簡単に言えば総資本(調達資金)の何倍の売上を上げているのかということです。
(4)売上総利益率
売上高に占める売上総利益(粗利益)の割合です。売上高総利益率を上げるためには、売上原価を下げるか、あるいはプロダクツ・ミックス(取扱商品の組み合わせ)で利益の最大化を図る必要があります。取扱商品の組み合わせとは、粗利益率の高い商品をいかに多く売るかという工夫になります。
(5)売上高利益率
売上高に占める営業利益または経常利益の割合です。
売上高営業利益率が低いとは、売上総利益率に問題がないならば経費が多いということになります。具体的には売上高を100として、各経費の売上高構成比を計算して前年と当年を比較すると、売上高営業利益率を下げた経費が判明します。その経費を重点的に管理すれば、売上高営業利益率は高まります。
また売上高経常利益率が低いとは、売上総利益率・売上高営業利益率に問題がなければ営業外費用が増えていることになります。よくあるのは支払利息の増加、つまり借入金の増加、または無理な借入による金利の上昇です。特に、売上高営業利益率は本業の利益率という評価がなされ、売上高営業利益率が低いとは、本業が不調であることを表します。
(6)売上高各費用率
売上高と売上原価あるいは経費(販売費および一般管理費)の比較です。これによって金額による増減ではなく、営業体質的な分析ができます。

以上、収益性に関する財務分析はこのようにいろいろなものがあります。基本的に収益性をあげるには、総資本は小さく、売上は大きく、原価・経費は小さくするということです。そんな魔法のようなことができるのか、あるいは都合のよいことができるのかと思われるかも知れませんが、実は大手企業ほど、そのような努力を貪欲にしています。本来であれば小さな企業ほどそのように努力しなければならないと思うのですが、意外と小さな企業はあきらめてしまう場合が多いようです。そこに伸びていく会社と、なかなかそうはならない会社との分かれ道があるように思います。

次回は「財務分析シリーズ(4)」として安全性分析の種類について説明します。どうぞ、お楽しみに・・

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