523.荒波に耐える財務体質の強化(3)
2021年7月18日
事業の財務体質を強化するためには、『黒字経営』『現預金の増加』が重要ですが、前回はそのうちの一つ『黒字経営』について
説明をしました。
今回はもう一つの対策である、『現預金の増加』について考えます。
1 現預金とは、経営にとって何を意味するのか
財務体質を強化するために現預金である手元資金を増やそうということですが、経営にとって「現預金」とは一体何を意味する
のでしょうか?
現預金は、会計では売掛金や棚卸資産と同様に「流動資産」に分類され、さらに売掛金などと同様に「当座資産」にも細分類されて
います。
また資金繰り的には「資金運用」に分類され、これまた売上債権等と同じポジションに分類されています。
さらに心情的には、経営者のポケットマネーのように分類され、経営者が自由に使えるキャッシュのように扱われます。
これらは、いずれも正しいか、現実的な実情だとは思いますが、ここではもう少し違った認識を持ちたいと思います。
それは売掛金や棚卸資産とは明確に区分され、心情的にももう少し改まった、現預金の取扱いです。
つまり、現預金は「事業の余剰資金」であり、「事業予備資金」であるということです。
これが事業の大きな安全性を、担保することになります。
現預金である手元資金とは、事業の余剰資金であり、予備資金です。
これが事業の大きな安全性を担保している!
2 現預金はどうやったら増加させられるのか
では、どうやって現預金を増加させればよいのでしょうか。
その考え方は3つあります。
(1)源泉を増加させる
第一に現預金の源泉を増加させるということです。
現預金の源泉を増加させるとは、売上を増やし、各段階の利益を積み増しし、そして、繰越利益剰余金である内部留保を積み増す
ということです。
(2)少しでも早く現預金化させる
第二に各資産の現預金化を少しでも早めるということです。
少しでも早く現預金化させるとは、各段階の資産のキャッシュ化スピードを上げるということです。
各段階の資産とは、資金化に要する時間の長さから順にいえば、固定資産→棚卸資産→売掛金→受取手形となります。
固定資産は、なるべく持たないこと、少なくすることがキャッシュ化スピードを上げることになります。
そのような発想から「ファブレス化」という考え方も浮かんできます。
棚卸資産は、品切れにはならない程度に、なるべく在庫を少なくすることが大事になります。
そのためには、在庫管理が重要です。
また、一般的な表現と同様「品切れにならない程度に」と接頭語をつけましたが、
現実的には、少々の品切れは『希少価値』を生み出しますので、少しの在庫切れ感が大事であることを記憶しておきましょう。
売掛金は、未回収を無くすことと、回収期間を創意工夫と理由付けで少しでも短くすることが大切です。
受取手形は、それさえ拒絶すれば、そのままの期間が短くなりますので、現在の商習慣では受取手形を受け取らないことが
半ば常識化していることを認識すべきかと思います。
(3)キャッシュの支出を減らす
第三にキャッシュの支出自体を減らすことです。
キャッシュの支出を減らすことは、現預金の増加に直結しますが、ただし、躊躇なく減らすべき支出と増やすべき支出の
メリハリつけることが大切です。
躊躇なく減らすべき支出とは、過剰な仕入と不要な経費です。
キャッシュをそれ以外のところに回すためにも、過剰な仕入と不要な経費を無くすることが大切です。
増やすべき支出とは、無理はできませんが、従業員の給与・賞与です。
それがすべてだとは言いませんが、やはり給与・賞与は、従業員のやる気の大きな要素の一つです。
公明正大に、給与・賞与は増やしたいものです。
手元資金の増やし方には
源泉を増やす・キャッシュ化を早める・キャッシュの支出を減らす、この3つがある!
今回は、現預金を増やすには「源泉増加」「回収短縮」「支出抑制」の三つがあることを理解しましょう。