529.知っておきたい 量子コンピュータ

2021年8月28日

現実的になかなか成果が現れない、うまく行かない、そんな少しアグレッシブな気持ちになれないときに

近い未来を想像してみるのも悪くはないかと思います。なぜなら、精神的に前向きにさせてくれるからです。

新型コロナ感染で閉塞感が漂うこんなときにこそ、ちょっと未来を想像してアグレッシブな気持ちを取り戻しませんか?!

そこで、今回は「量子コンピュータ」について考えてみます。

 

そもそも量子コンピュータとは、「量子重ね合わせ」「量子もつれ」などという量子力学上の現象を利用して、

膨大なデータを高速な並列計算ができる未来のコンピュータだそうです。

しかし、すべての面で現在のコンピュータ(スパコン含む)より量子コンピュータが優れているかといえばそうではなく、

膨大な組み合わせの中から最適解を選ぶような計算に向いているのだそうです。

「量子コンピュータが向いている例と向いていない例」日本総研:量子コンピュータの概説と動向(2020)より

 

上図のように、量子コンピュータは純粋な計算には向いていませんが、思考的な演算には向いているといわれます。

したがって量子コンピュータは、現在のコンピュータと並立して存在することになります。

 

1 量子コンピュータとは

量子コンピュータとは量子力学特有の現象を計算に利用して、膨大なデータ量を高速処理するコンピュータです。

量子力学とは、原子や電子・ニュートリノなど、非常にミクロな世界の量子のふるまいを証明する法則です。

目には見えない小さな量子は、身の回りの物理法則には当てはまらない不思議なふるまいをしますので、

その動きを証明するために発展してきた学問が「量子力学」です。

 

量子コンピュータは、量子力学特有の物理状態である「量子重ね合わせ」「量子もつれ」などの原理を利用します。

  ・「量子重ね合わせ」とは、量子は粒子と波の性質を同時に持っているので、

    観測することによってどちらか確定するという原理です。

  ・「量子もつれ」とは、2個以上の重ね合わせ状態にある量子同士が相関を持つということです。

 

いまのコンピュータの情報最小単位は「ビット」といいますが、量子コンピュータの情報最小単位は「量子ビット」になります。

つまり、いまのコンピュータは「0」と「1」の二進数どちらかしか扱えませんが、

量子コンピュータは量子の性質を利用して、「0」と「1」両方を重ね合わせて、同時に扱うことができるようになります。

 

さて、理論的なことはこの程度にして、量子コンピュータが実用化されると、どんな社会が実現するのでしょうか?

 

 

2 量子コンピュータが実現させる社会

 

このような世界が、もうすぐそこまで迫っているといわれています。

量子コンピュータで実現する未来を想像すると、閉塞感を感じることが多い日々の中で思考が前向きになってワクワクして来ます。

 

(1)金融業界を画期的に変革させる

いまは会社の方針を受けた恣意的なアドバイスをする金融担当者に相談し、金融商品を選ぶしかありません。

しかし、量子コンピュータが実現すると、量子コンピュータで膨大な組み合せの中から、儲かる組み合せを瞬時に見つけ出し、

顧客が自分の意思で金融商品を選べるようになるといわれています。

 

(2)運送業を画期的に変革させる

量子コンピュータは、物流・配送などの経路最適化にも対応します。

すでに北京では渋滞緩和に向けた交通最適化の研究で量子コンピュータが利用されているといわれています。

わが日本でも、日本郵便が最適な配送ルートの算出に活用しているそうです。

 

(3)医薬品業界を画期的に変革させる

量子コンピュータは、医薬開発や創薬にも大きな可能性があるといわれています。

多様な分子の物性を量子コンピュータでシミュレーションすれば、いま1年かかるような計算が一瞬で計算できるようになり、

コロナ感染のようなパンデミックが生じても、ワクチンや治療薬を短期間で開発できるようになります。

 

(4)自動車・航空機産業を画期的に変革させる

自動車や航空機を開発する際の空気抵抗や地球環境のシミュレーションでも、量子コンピュータは活躍します。

 

(5)AIロボット産業を画期的に変革させる

量子コンピュータは、AIの劇的な発展をあと押しします。

ディープラーニングに量子コンピュータを活用すると、AIが正しい判断できるまでの学習時間が短縮できますので、

AIがより正確な判断をするようになると期待できます。

それによってAIが高度化すれば、一時話題となった、人のさまざまな仕事がAIに置き換えられ、自動運転やロボットなどの

分野でも変化が生じてきます。

例えば・・

事務員、銀行員、警備員、建設作業員、スーパー・コンビニ店員、タクシー運転手、電車運転士、ライター、集金人、ホテル客室

係員・ホテルのフロントマン、工員などは、不必要になる、あるいは減らせる可能性があるといわれています。

逆に、営業マン、アナリスト、介護員、カウンセラー、コンサルタントなど、常に状況に応じた判断が求められる職種は、比較的

減らないといわれています。

この違いを見ると、量子コンピュータの利用分野が想像できます。

 

(6)営業活動を画期的に変革させる

ちょっとひと昔前までは、「営業は足だ!」、「営業は汗と根性だ!」などといわれていた営業活動ですが、

これも量子コンピュータが実現してくると大きく変えるといわれています。

特に、営業担当者が訪問する際、どのようなルートを組めば最短距離で回れるかという巡回セールスであれば、

量子コンピュータで組み合せ最適化問題を瞬時に解けますので、高効率に訪問活動ができるようになります。

 

(7)省エネも画期的に変革させる

いまのビットコンピュータより、遥かに少ない電力で演算できるところも、量子コンピュータのスゴイところです。

スーパーコンピュータは複雑な計算問題は解けますが、同時に莫大な電力も消費します。

1台で「原発1基分の電力が必要なる」ともいわれています。

しかし量子コンピュータであれば、演算そのものにほとんど電力を消費することなく、しかも、圧倒的に短時間で計算できます。

資源の節約面でも、量子コンピュータは変革させるということです。

 

 

3 シンギュラリティとの結合

このように、量子コンピュータで実現する社会を想像しますと、『シンギュラリティとの結合』に行き当たります。

『シンギュラリティ(Singularity;技術的特異点)』とは、

米国の人工知能研究のおける世界的権威でもあるレイ・カーツワイルらが示した未来予測の概念です。

人工知能AIが人間の能力を超える時点 や、それにより人間の生活に大きな変化が起こるという概念のことです。

 

わかりやすくいえば、技術の加速度的な進化の結果、いずれコンピュータが人間の知能を超える『超知能』を獲得するようになる

ということです。

そして、人間にはその『超知能』がどのような振る舞いをするのか、予測も制御もできず、その甚大な影響によって社会や人々の

生活に決定的な変化が起こると考えられています。

その『シンギュラリティ』は、あと数年後の2029年にはAIが人間並みの知識を備え、さらにあと四半世紀後の2045年には

技術的な特異点『シンギュラリティ』が来るといわれています。

 

この概念の背景には「ディープラーニング」や「ニューラルネットワーク」など、量子コンピュータでさらに発展させられると

考えられている概念と重なっているところが数多くあります。

つまり、「量子コンピュータの実用化とシンギュラリティの時期とは一致している」ということです。

 

 

いかがですか、何かワクワク、ドキドキしてきますね。

ここで大切なことは、科学の発展によって置き換えられないように、不断に『知価改革』を進めておくということです。

『知価改革』とは、全員の智慧によって、仕事の付加価値を高めるということです。

どんな些細なことでも、日々考え抜いて改善して行く、という地道な積み重ねが『知価改革』に結びつき、

科学の発展に淘汰されないビジネスモデルが構築できるのだと思います。