527.知っておきたい DXとは

2021年8月15日

 昨今、新聞などでよく目にするようになった「DX(ディー・エックス)」という言葉。

DXとは、デラックスの略? ではないのです。

何やら進んだ企業で活用されているIT技術であるようなことは想像できても、詳しくは知らない方が多いのでは?

そこで今回は、「DX」についてわかりやすく紹介します。

 

1 DXとは

 DXとは、「デジタル・トランスフォーメーション」の略で、ディーエックスと読みます。

なんとなく、DXと聞いて、企業のIT化やデジタル化といったイメージを抱く人も多いかもわかりません。

しかし、DXとは、実はそこだけの範疇に留まらず、社会全体までも取り込む変革なのです。

 

 DX発祥は2004年と17年前までに遡り、スウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマンが

その概念を提唱したといわれています。

曰く、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面で、より良い方向に変化させる」ということだそうです。

 因みに、デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)は、頭文字だったら「DT」と略されるように

思いますが、英語圏では接頭辞「Trans」の省略形は「X」と表記されることが多いため、「Transformation」が「X」となり、

「Digital Transformation」=「DX」となっています。

 なお、Digital Transformationを直訳すれば、「デジタルに置換える」とか、「デジタル転換」というような意味になります。

 

DXとは「デジタル・トランスフォメーション」の略であり、

行動・知識・経験・モノなどをデジタルで捉えて変革することです!

 

 

2 経産省が定義した日本企業にとってのDX

 2018年12月、経産省で「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」が

まとめられています。

それによれば「DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていくうえで経営者が抑えるべき事項を明確にすること」と

「取締役会や株主がDXの取り組みをチェックするうえで活用できるものとすること」とされています。

この中での「DXの定義」は次のように述べられています。

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 企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、

 ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立する

 ことである。

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何やら、ひと昔前の「EMS」などの定義とよく似ていますが、相変わらずお役所の定義はいま一つピン!ときません。

 しかし、この定義でも、DXは単に製品やサービスを変革するだけでなく、企業文化までを変えて取り組むべき覚悟が必要である

ことはわかります。ただし、私たちは事業で取り組むわけですから、加えて「業績」が伴わなければなりません。

そうすると、次のように理解すれば、さらにわかりやすくなります。

   「DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、

    顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、

    業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、

    競争上の優位性を確立し、それによって企業として安定した収益を得られるような仕組みを作ることである。」

つまり、DXとは

 1.企業がビジネス環境の激しい変化に対応するために

 2.データとデジタル技術を活用して

 3.顧客や社会ニーズをもとに製品やサービス・ビジネスモデル(業務・組織・プロセス・企業文化・風土など)を変革し

 4.競争上の優位性を確立して、企業として安定した収益を得られるような仕組みを作る

ということです。

 

 要は、いまどの中小企業にとっても避けることができないのが「DX」です!

 

 

3 アマゾンでのDX実践例でDXを理解する

 DXの先駆者的な実践企業といえば、アマゾンです。そこでアマゾンを例にDXを理解していきましょう。

 

(1)「行動」をDXでデジタルに置き換える

アマゾンは、巨大なECプラットフォームを構築し、顧客はどこにいても好きなものが何でも買えるという環境を作りました。

これは、買い物に行くという「行動」を、デジタルに置き換えたと言い換えられるということです。

米国の同業大手小売業であるシアーズやトイザらスなどは経営破綻しましたが、そのことはアマゾンが実践したDXによる影響が

少なくないといわれています。

 

(2)「知識・経験」をDXでデジタルに置き換える

 アマゾンのECサイトで買い物すると、商品ページに「よく一緒に購入されている商品」とか、「この商品を買った人はこんな

商品も買っています」といった表記のもと、関連性が高い商品が表示されることに気付かれた方も多いかと思います。

これはいまでこそ、他のECサイトでも見られる「レコメンド機能」を利用しているわけです。

レコメンド機能とは、類似した顧客の購入情報に基づいた商品や顧客自らの過去の購入情報、さらにはこの両者を合体させて、

顧客に適した推薦商品を自動的に表示します。

 アマゾンはこのレコメンド機能を実装したサイトの先駆者なのです。

実店舗の店員のように、個々の顧客に応じて、商品を推薦する機能をサイト上に実装し、顧客の行動をさらに活性化させました。

このことは、顧客が次に何を欲しがるかというこれまでは店員の「知識」や「経験」から生み出されてきたことを、デジタルに

置き換えたといえます。

 *レコメンド(recommend)とは、直訳すると「勧めること」となります。
  
ECサイトを中心に活用されるレコメンド機能とは、顧客の興味をひきつけるような商品やサービスをおすすめする手法です。
  
レコメンドは、顧客の閲覧履歴や購買履歴を解析し、顧客の好みに合いそうな商品やサービスを提案します。
  ECサイトを訪れる顧客は、すでになんらかの商品に興味を持っており、少なからず購入意思のある顧客といえます。
  レコメンド機能を利用すれば、購入見込みの高い顧客に対して最適なタイミングで商品の提案が可能なため、顧客単価や購入単価を
  高める効果が期待できます。
  なお、レコメンド機能はECサイトだけではなく、ニュースサイトや不動産情報サイト、求人情報サイトなどでも利用されています。
  リピーターの獲得や顧客単価アップといった運営側のメリットはもちろん、顧客にとっても商品やサービスの選択肢が広がり、
  サイトの利便性が向上するといったメリットがあるといわれています。

 

(3)「モノ」をDXでデジタルに置き換える

 アマゾンが顧客の行動に変革を起こしてきたのは、これだけではありません。

アマゾンの本業はEC事業ですが、動画配信などのデジタルコンテンツの提供も行っています。

映画などの動画を自宅で見るためには、これまでブルーレイディスクやDVDなどの媒体を購入するか、あるいは借りてくるか、

どちらかの必要がありました。

アマゾンはこれを無くしたわけです。

アマゾンは動画配信により「モノ」を買ったり借りたりするという必要を無くし、デジタルに置き換えたのです。

 

 

いかがですか、

DXの理解そのものや具体的にどうやってDXを自社に取り入れるかは別にして、こうした新しい経営技術を知ってみると、

ふと新たな発想が、フッと一瞬でも見えませんでしたか?

これが新しい用語を知る重要な意味でもあります。