17.支払能力①広義の流動比率
2009年9月18日
今回から一つ一つの財務分析についてコラム風に説明し、財務分析の結果にどのような対策が考えられるか、皆さんの会社経営にとって役立つを解説させていただきます。ぜひ、ご一読を。
財務分析解説コラム(1) 当社の支払能力は大丈夫? -流動比率-
流動比率(流動資産÷流動負債)とは、会社の短期支払能力を表す
流動比率とは、自社の短期返済金(流動負債)に対する支払能力を財務分析です。突然、「短期借入金を返済してください」と金融機関から言われたらどうしますか?お金(調達資金)の使い方にはルールがあります。短期間で返済しなければならない他人資本(流動負債)は、いつでも返済準備ができる資産(流動資産)で運用しておく必要があります。その状況を確認する財務分析が「流動比率」で、流動資産÷流動負債×100という計算式で求められます。
流動比率の「良し・悪し」は、前年との比較と同業他社比較で決める
一般的には、「流動比率は200%あれば安全」と言われていますが、実際には同業他社と比較したり、自社の前年と比較したりして判定します。しかし、120%を切っているようであれば、流動比率を高める経営管理(マネジメント)をする必要があります。
どうすれば流動比率は改善できるのか、こう実行すれば必ず流動比率は改善できる
流動比率を改善するには、計算式から考えれば ①流動資産を増やす ②流動負債を減らす ことで流動比率が高まり、改善されることがわかります。では、具体的にどうすれば良いのでしょうか?
分子の流動資産を増やして流動比率を改善する
流動資産の中身を見ると、現金・預金・受取手形・売掛金・有価証券・たな卸資産などがあります。
(1)現預金を増やす方法
意思決定するのは社長の役目です。できる限りの対策を考えて見ましょう。
①単純な方法は増資(資本金を入れる)を行い、現預金を増やすことです。
②増資なんてできない?では、銀行に融資を申し込み、預金を増やしましょう。融資申込みする際は資金がいる消極的な理由ではなく、資金をどう活かしどのくらい業績が改善できる見込みなのか、金融機関に安心感を与えましょう。これには当たり前ですが、融資には返済済義務と金利が生じますので、慎重に考える必要があります。
③借り入れもいまひとつと思われている社長、売掛金の回収を早めましょう。実はこれが一番初めに着手しなければならないことです。私の知る限りでは、意外と売掛金の回収が疎かになっている企業は多いです。中小企業の場合は、回収を社員に任せるのではなく、社長自らが回収に当ることが大切です。それによって未回収問題はかなり解決されるはずです。さらに売掛金の回収期間を短くする努力をすることも大切です。できない?いやいやそうはおっしゃらないで、必ずやる方法はあります。たとえば、取引条件を有利にする代わりに回収期間を短くさせていただくとかあるいは一部前受金にするとか、現場であれば現場あるほど、具体的なアイデアは沸いてくるはずです。
④大事なことは“実行する”という実行力ことです。結果はどうであれ、やってみましょう。
このようなことをすると必ず改善されます。なぜかって・・? それはいままでそんな努力をしてこなかったからです。
(2)売掛金を増やす方法
売掛金を増やすとは、売上を増やすということに他なりません。「こんな不況な中、売上を増やすなんてできないよ」と思われたらそれまでです。これも中小企業の一番悪いところです。大企業は頑張っているのです。私たち中小企業はそれ以上に頑張らないといけない立場なんです。もう一度、自社の商品・製品のターゲットを絞りに絞り込んで、アピールの仕方やディスプレイの仕方、品揃えやセット化、価格政策、販売チャネル(インターネットショップの利用)など、よく考えて見ましょう。
これも実行すれば、必ず売上は増えます。
分母の流動負債を減らして流動比率を改善する方法
もうひとつの考え方は流動負債を減らすことです。流動負債には支払手形、買掛金、短期借入金、未払金、未払費用などがあります。
(1)買掛金を減らす
「買掛金を減らすなんて資金繰りを悪くさせるだけじゃないか」と思われるかも知れません。確かにその側面もありますが、ここでいう買掛金を減らすとは、資金繰りを悪化させない範囲で、買掛金を減らすことができないかということです。買掛金を減らすということは現金支払を増やすことになりますので、それを条件に仕入条件を有利に変更できないかということです。
(2)短期借入金を減らす
一番考えなくてならないのは、短期借入金を長期借入金に借り換えするということです。これも「そんなことができれば、とっくにやっているよ」と言われるかもしれませんが、もう一度よく考え、いろいろなところに相談するものいいかと思います。できなくてもともとです。やってみましょう。
流動比率が高くても注意しなければいけない点
流動比率が高かったと思われているあなた、いま一度、次の点を確認してください。次の3点はいずれも、実際以上に流動比率を高く見せます。
①売掛金の中に不良債権はありませんか?
もう倒産している会社の売掛金、何年も回収されていない売掛金、こんなものが入っていても流動比率が高くなります。
②たな卸資産の中に不良在庫はありませんか?
もう売ることが不可能な在庫をそのままにしていませんか。こんなものが入っていても流動比率は高くなります。
③長期借入金の本年度返済分は、流動負債の「1年以内返済長期借入金」に計上していますか?
これが計上されていない場合、分母の流動負債が小さくなりますから、当然、流動比率は高くなります。長期借入金のうち、今年の返済額を「1年以内返済長期借入金」に計上することは、外部公表する上での公的なルールです。
いかがでしたか、少しでも興味持ってお読みいただけましたか?
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