532.新.財務諸表1 財務諸表の概要
2021年9月17日
コロナ禍で厳しい経営環境が続きますが、こんなときにこそ日頃作成している『財務諸表』を経営に活かしたいものです。
そこで今回から、これまでも何回か「財務諸表」について、あらためて『新.財務諸表』というテーマで
「どのように財務諸表を経営実務に活かせばよいのか?」をわかりやすく、そして経営実務に活かすという視点から説明したいと
思います。 その第1回目は『財務諸表の概要』です。
1 財務諸表の役割
財務諸表とは、「企業の経営成績」を表しています。
会社はこの1年でいくら儲けたのか? については「損益計算書」で示しています。
また、会社の財政状況はどうなのか? については「貸借対照表」で示しています。
言い換えれば、財務諸表とは、家計の家計簿であり、預金通帳のようなものです。
これらは当該企業の株主・債権者など「利害関係者」に向けた役割でもありますが、
中小企業においては大企業のように利害関係者はほとんどいませんので、ことさら経営者である「社長ならびに幹部社員」あるいは
「社員」に向けた役割になります。
しかし、ほとんどの中小企業は、株主や債権者あるいは社員に情報公開をしていません。
したがって、中小企業に関しては、「財務諸表は、経営者である社長ならびに一部の幹部社員に向けた情報である」といえます。
しかし、その肝心かなめの社長や幹部社員が財務諸表を読めなければ、豚に真珠、猫に小判となってしまいます。
ぜひ、自社の財務諸表が読めるように、勉強ではなく、実地・実務で活かせるようにトレーニングを積みましょう。
中小企業に関して財務諸表は、実質、社長・経営幹部に向けた情報です!
なお、財務諸表は「会社法」と「金融商品取引法」によって、会社に義務付けられていることも知っておきたいものです。
「会社法」はすべての会社に適用される法律であり、「金融商品取引法」は上場企業などに適用される法律です。
財務諸表の作成は会社法と金融商品取引法によって義務付けられています!
2 財務諸表の種類
会社法では、次の4表を「計算書類」と呼び、さらに2表を加えて「計算書類等」とも呼びます。
その4表ならびに2表は、次のものです。
1.貸借対照表 2.損益計算書 3.株主資本等変動計算書 4.注記 5.事業報告書 6.附属明細書
金融商品取引法では、次の5表を「財務諸表」と呼びます。
1.貸借対照表 2.損益計算書 3.キャッシュフロー計算書 4.株主資本等変動計算書 5.附属明細表
財務諸表は、会社法では計算書類、金融商品取引法では財務諸表と呼んでいます!
3 財務諸表作成のルール
財務諸表を作成するにあたり、各企業が自由勝手に作成していたのでは意味がありません。
ある程度、統一したルールが必要となります。 その統一したルールが「企業会計原則」と呼ばれるものです。
財務諸表は企業会計原則に沿って作成します!
この「企業会計原則」には、次の7つの原則があります。
1.真実性の原則
真実性の原則とは、ウソはいけないということです。
財務諸表は、真実の報告するものでなくてなりません。
2.正規の簿記の原則
精機の簿記の原則とは、取引は簿記によって仕訳をするということです。
勝手な仕訳は許されていません。
3.資本取引・損益取引区分の原則
資本取引・損益取引区分の原則とは、取引は資本取引と損益取引とを明瞭に区分して、作成しなさいということです。
資本取引と損益取引を混同させてはいけません。
4.明瞭性の原則
明瞭性原則とは、誰にも誤解させないように、作成しなさいということです。
事実を明瞭に表示して、経営状況の判断を誤らせないように作成しなくてはいけません。
5.継続性の原則
継続性の還俗とは、毎期同じ会計処理の方法を続けなさいということです。
減価償却や引当金など、経営の状況によって変えてはいけません。
毎期同じ計算を継続し、状況判断を誤らせないようにしなくてはなりません。
6.保守主義の原則
保守主義の原則とは、万が一、損が発生しても、それに備えられるような計算をしなさいということです。
財政等に大きな影響を及ぼす可能性がある場合は、貸倒引当金のように、それに備えた会計処理をしないといけません。
7.単一性の原則
単一性の原則とは、二重帳簿の禁止ということです。
銀行提出用や申告書提出用に財務諸表の内容を変えてはいけません。
以上、今回は「財務諸表の概要」を説明しました。 これらは財務諸表作成の『原理原則』です。
財務諸表は、「正しい会社の状況を表すものにしなくてはならない」と認識しておきたいものです。
次回は「財務諸表が表すもの」を説明します。