18.支払能力②狭義の当座比率

2009年9月23日

財務分析解説コラム(2) 当社の支払能力は大丈夫?もっとシビアに見る -当座比率-

当座比率(当座資産÷流動負債)は超短期的な支払能力を表す
当座比率とは、自社の短期返済金(流動負債)に対してすぐ返済できる支払能力を財務分析です。 「2・3日のうちに短期借入金を全額引き上げます」と、金融機関から言われたらどうしますか?
そんな場合に当座比率が100%近くであれば対応できるということです。当座資産とは現金・預金・受取手形・売掛金・有価証券など、比較的換金性の高い資産です。前回の流動資産のように、棚卸資産や短期貸付金などは入っていません。したがって繰り返しになりますが、緊急的に支払が必要になっても対応力があるといえます。当座比率を求めるには 当座資産÷流動負債×100 という計算式で求めます。

当座比率の『良・悪』判定
流動比率と同様、前年との比較、同業他社との比較で『良・悪』を判定します。一般的には、100%あれば安全と言われますが、現実には80%前後は欲しいところです。50%を切っているようであれば当座比率を高める経営管理(マネジメント)を実施する必要があります。

どうすれば当座比率は改善できるのか?「実行さえすれば必ず改善できる!」
当座比率を改善するには、計算式から ①当座資産を増やす ②流動負債を減らす ことで当座比率が高められることがわかります。では、具体的にどうすれば良いのでしょうか?

当座資産を増やして流動比率を改善する方法
当座資産は、現金・預金・受取手形・売掛金・有価証券から構成されています。
(1)預金を増やす
意思決定するのは社長です。当座資産の中でも、現預金を増やすことが重要です。
①増資を行い、現預金を増やす方法があります。これには資金を調達することが必要です。
②銀行に融資を申し込み、預金を増やす。この方法はまだ少しは余裕があるタイミングで行うことが大事です。それによって借入条件は少しでも良くなりますし切羽詰った状況下では条件が悪くなるばかりか、借入自体が難しくなります。当たり前ですが、これには返済義務と金利が生じますので、慎重に考える必要があります。
③一番しなくてはならないことは、売掛金の回収を早めることです。当座資産の合計は変わりませんが、現預金で持つことによって当座資産の質が良くなります。私の知る限りでは売掛金回収が疎かになっている会社は本当に多いと思います。回収は社員に一任するのではなく、トップ自ら、回収に当ることが問題を一早く解決する打ち手です。さらに、売掛金回収期間を短縮化することも大事です。取引条件を有利にする代わりに回収期間を短くする、あるいは一部前受金にするなど、打ち手は意外にあります。まず考えたことはやってみましょう。
④有価証券を売却する。これもある程度余裕を持ってやらないと売却損がでます。しかし、火急の場合はともかく売却して現金を増やすことです。
(2)売掛金を増やす
売掛金を増やすとは売上を増やすことと、受注から納品までの期間を短縮化することです。「売上拡大?こんな(不況)時にムリだよ・・」、でも同業種は皆そうですか?必ずなかには売上を増やしている企業があります。諦めたら、そのとおり、「無理」ですね。また納期期間を短縮することも大切です。早く債権化できるばかりでなく、納期短縮するということは生産性をあげることであり、コスト削減と価格競争力も強くします。大企業は努力しているのです。私たち中小企業はそれ以上に努力しなければなりません。

流動負債を減らして当座比率を改善する方法
もう一つの考え方は流動負債を減らすということです。流動負債には支払手形・買掛金・短期借入金・未払金・未払費用などがあります。
(1)買掛金を減らす
買掛金を減らすなんて、資金繰りを悪くさせるだけじゃないかと思われるかもわかりませんが、決してそうばかりとは言い切れません。買掛金を減らすということは、仕入数を見直すことでもあり、在庫は圧縮できます。また良い仕入条件を提示して仕入単価を下げるということです。仕入単価が下がると、売上総利益率は向上します。
(2)短期借入金を減らす
短期借入金を減らすとは返済もありますが、基本的には長期借入金に変更するということです。これも 「そんなことができれば、とっくにやっているよ。」と言われるかもしれません。ともかく一度、金融機関にお願いしましょう。いろいろと方策が生まれてくるかもわかりません。

当座比率が高い場合の注意点
当座比率が高かいので「ひと安心」と思われているあなた、いま一度、次の点を確認しましょう。次の3点は、いずれも実際以上に当座比率を高くします。
①売掛金の中に不良債権はないか。
②たな卸資産の中に不良在庫はないか。
③長期借入金の本年度返済分は、流動負債の「1年以内返済長期借入金」に計上しているか。

いかがでしたか?
今回の対処方法は、基本的に流動比率と同じです。ただ短期支払能力が高い企業は、現預金を多く持っています。現預金の構成比が当座資産、流動資産の質を表します。
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