539.新.財務諸表7 損益計算書が表すもの

2021年11月6日

これまで財務諸表の「貸借対照表」を見て来ましたが、今回から「損益計算書」に移ります。

貸借対照表が「企業の財政状況を表す」のに対し、損益計算書は「1年間の営業成績を表す」といわれます。

企業が1年をかけて「どれだけ儲けたのか」あるいは「どのように儲けたのか」を損益計算書は表します。

そんな損益計算書をこれから見ていきます。

 

 

1 損益計算書の概要

(1)「1年間の純利益」を表す

1.P/Lは1年間の事業活動の純利益を表す

純利益とは、収益から費用を差引き、さらにそこから税金等を差引したものです。

これがB/Sの繰越利益剰余金に回り、P/LとB/Sをつなぐパイプとなっています。

2.収益とは

収益とは、そのほとんどが売上高ですが、細かくは営業外収益との合計のことです。

これが事業の「資金の源泉」となり、資金の調達(総資本)へ回り、その資金が運用(総資産)されるわけです。

この収益という言葉は、一般的には利益や業績という意味でも使われますが、会計では主に「売上高」という意味で使われます。

3.費用とは

費用とは、売上原価と販売費及び一般管理費、それに営業外費用の合計であり、収益を得るためのコストと言い換えられます。

これは事業の「資金の使途」となり、資金が社外流出します。

4.純利益とは

純利益とは「当期純利益」のことであり、純資産に繰越される「自己資金の源泉」です。

 

P/Lは資金的には資金の源泉と資金の使途を表しており、その残高が純資産に繰越される!

 

(2)損益計算書の原則

P/Lを作成するにあたっては「3つの原則」が重要です。

きちんとしたP/Lを作成するためにも、理解しておきたいものです。

1.発生主義の原則

 発生主義の原則とは、現金の入金・出金時に計上するのではなく、取引が生じた時点で計上するという意味です。

 また、発生した期間に計上するという意味でもあります。

 特に、決算前後に発生した取引に関しては、帰属する期間を正しく判断して処理しなくてはなりません。

2.総額主義の原則

 総額主義の原則とは、収益と費用を直接相殺して、その差額だけを計上していけないという意味です。

 収益と費用を相殺して計上すると、利益がどんな収益と費用から生み出されたのかわからなくなってしまいます。

 会計は”記録”でもあります。漏れなく一つ一つ計上することが大切です。

 その意味では、雑費などという科目を使用することも、あまり感心できません。

3.費用収益対応の原則

 費用収益対応の原則とは、当期の収益に対する費用は、すべて当期に計上するという意味です。

 決算修正と称して、棚卸資産を税務調整のために使う事例などがありますが、

 そんなことをすると当期の純利益が歪められますので、「記録」という観点からも好ましくありせん。

 

正しい経営成績を表すために発生主義・総額主義・費用収益対応の原則を守ろう!

 

(3)損益計算書の基本フレーム

損益計算書には「3つのフレーム」から構成されています。

1.営業損益計算

企業は製品や商品・サービスなどを、商品や材料などを仕入したうえで製造経費や経費などをかけて販売します。

いわゆる、P/Lの中心となります。

そこまでの部分を示したのが「営業損益計算」であり、その最後は「営業利益」で締められています。

2.経常損益計算

営業利益から企業は、営業活動そのものではありませんが、

借入金利を支払ったり、預入利息を得たり、あるいは本業ではない収益を得たります。

そこまでの部分が「経常損益計算」であり、その最後は「経常利益」で締められています。

なお、経常とは、「通常の」「当たり前の」「正常な」などという意味です。

3.純損益計算

この経常利益に加え、予期せぬ損失などが発生することもあります。

これは経常活動と区別しないと、正常な収益力がわからなくなりますので、「特別損益」として扱います。

そこまでの部分が「純損益計算」であり、その最後は「税引前当期純利益」で締められ、

そして法人税等を差引して「当期純利益」で締められています。

 

P/Lフレームの節目は売上高、総利益、営業利益、経常利益、そして純利益です!

 

 

 

以上、今回は「損益計算書が表すもの」と題し、P/Lの概要を説明しました。

次回は「知っておきたいPL知識」と題し、P/Lの深掘りをします。