20.債務償還力①債務償還年数
2009年10月9日
財務分析解説コラム(4) 当社の債務償還能力は大丈夫?借入金の返済力を見極める -債務償還年数-
これまで会社の支払能力について、流動比率、当座比率、手元流動性と見てきました。今回からはもう少し的を絞った支払能力、「債務償還能力」について3回ほど説明していきます。まず、債務償還能力第1回目は『債務償還年数』です。
支払能力と債務償還能力とはどう違う?
支払能力とは短期返済の他人資本である「流動負債」を、いつでも返済対応可能なように資金運用をしているのかどうかを見る指標です。従って、流動資産・当座資産というグロスの資産と、流動負債というグロスの負債を比較することによってその判断をしました。
一方、債務償還能力とはもっと具体的に的を絞り、会社に借入金を返済できる力がどの程度あるのかを見極める指標です。融資申し込みをした場合、金融機関が非常に重視する指標です。
債務償還年数とは
債務償還年数とは「有利子負債」を全額返済できるまでの年数、返済能力を示します。
有利子負債とは会社が利子をつけて返済しなければならない負債のことです。中小企業の場合は金融機関からの借入金です。負債の中でも、買掛金・支払手形・未払金などは利子がかからないため、有利子負債には含まれません。手形の割引も現在は有利子負債には含まれません。
計算式:債務償還年数=有利子負債÷(営業利益+減価償却費)
債務償還年数の判定
債務償還年数は短ければ短いほど良い指標です。一般的に、金融機関からは「10年未満」が正常先という判定がなされるので、少なくとも10年以内にしたいところです。10年以上20年以下であれば要注意先、20年以上であれば破綻懸念先と見なされるといわれています。
債務償還年数を改善するには
(1)有利子負債を減らす
計算式を見ればわかるように、有利子負債を減らせば債務償還年数は短くなります。これが第一の打ち手です。具体的には会社の遊休遺産を売却する、社長の金融資産を用いて返済するなどです。
(2)営業利益を増やす
営業利益を増やすとは分母の返済原資を増やす方法です。営業利益を増やすには、①売上原価を削減する(売上総利益を増やす) ②販売費及び一般管理費を削減する ③売上高の増やす の3通りが考えられます。
思われる以上に売上原価と販管費の削減策はあるものです。大事なことは、たとえ小さな金額であっても「削減を実行する」ということです。不思議なものですが、一つ削減ができれば、次から次に削減できる費用が出てくるものです。不思議ですが、それが現実です。
売上高の拡大も「できるのであれば、もうとっくにやっているよ」と言われる方もおられるとは思いますが、それを言い切ってしまったらお仕舞いです。もう何もすることができません。21世紀に入って時代は大きく変わっているのです。それを取り入れた販売戦略をやっていますか。もう一度、よく考えましょう。そしてトライしましょう。意外とやっていない会社が多くあるのではないのでしょうか。
いかがでしたか?
本文中でも「時代は大きく変わっている」とありましたが、振り返ってみると我が国は戦後からつい最近まで、一貫して『膨張の時代』でした。が、その潮目が変わり、これからは『収縮の時代』です。これまでは市場がどんどん大きくなっていきましたので、問題が問題とはならずに過ぎてきました。でもこれからは収縮の時代ですので、問題は問題として表出してしまいます。
一番端的な例は『会計資料』です。これまでは経営者が会計資料や決算書が読めなくても、問題はあったのですが、現実的にはさほど問題はありませんでした。しかしこれからは、経営者が会計資料や決算書を読めないということは、会社経営の致命傷となってしまいます。「倒産している会社の経営者の多くが会計資料を読めなかった」という事実が如実にそのことを表しています。
また『収縮の時代』は国内だけの話です。地球規模的にはまだまだ『膨張の時代』が続きます。ということは、中小企業といえども海外進出を考え始めなくはならないということを暗示しているのかもわかりません。
いずれにせよ、「同じことをやっていてはダメ」ということがよくわかるのではないのでしょうか。自社の経営も同様です。時代は変わっているのです。自社にちょっとしたチェンジという「スパイス」をふりかけましょう。
インプルーブ研究所に参加されている会計事務所では、このような管理会計指導を巡回監査という業務を通じて皆さまの企業経営をサポートされています。
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