558.科目の読み方⑭ 減価償却費
2022年3月27日
今回の科目の読み方は『減価償却費』です。
減価償却費というと、何か難しいそうな用語で、かつ専門的な響きがありますが、
その内容を理解すれば、さほど難しいものではありません。
要は、一時的に発生した固定資産購入費をその使用期間で費用化する手法のことです。
但し、固定資産を購入した時に支払は済んでいますので、減価償却費は利益から減算されますが、
費用に中で唯一、支払が伴わない費用科目です。 このことを「資金流出しない」といいます。
そういう意味では、ちょっと特殊な費用科目ですが、そんな減価償却費の読み方について、考えてみましょう。
減価償却費は支払(資金流出)を伴わない科目です!
1 減価償却費とは
減価償却費とは、固定資産(機械・設備等)の購入時に支払った金額全額を、その年だけの費用とは考えずに、
税法で定められているその固定資産の使用期間である「耐用年数」に応じてその費用を配分し、
その期に相当する金額を費用計上化する科目です。
また、その減価償却の対象となる固定資産のことを「減価償却資産」と呼びます。
たとえば、営業用の車両100万円を現金で購入した場合は次のような仕訳となります。
借方:車両運搬具 1,000,000円 貸方:現金 1,000,000円
そして、決算月で営業用車両の耐用年数が10年とすれば、当期分の減価償却費10万円を計上するときに、
次のような仕訳をします。
借方:減価償却費 100,000円 貸方:車両運搬具 100,000円
これは該当する固定資産から減価償却費を直接減算していますので「直接法」といいます。
しかし、それでは一年分の減価償却費を決算月だけに一括計上することになりますので、決算月の損益がいびつになります。
固定資産は毎月使用していたのに、決算月だけに減価償却費を一括計上するなんて、おかしい話です。
そこで概算の減価償却費を毎月計上するために、「減価償却累計額」という固定資産の科目を使い、毎月計上することにします。
これも管理会計的な考え方です。
この方法は、減価償却費を固定資産に一旦プールしますので「間接法」と呼びます。
毎月の仕訳は次のようにします。
借方:減価償却費 100,000円 貸方:減価償却累計額 100,000円
こうすることによって、該当する固定資産自体は減算されずに、毎月、概算の減価償却費が計上できるにようになります。
より正確な月次損益を求める管理会計としては、「間接法が適している」といえます。
減価償却費の仕訳には直接法と間接法とがあります!
2 減価償却費の仕訳
減価償却費の仕訳は少し特殊なので、詳しく紹介しましょう。
(1)月次の仕訳
月々の損益を正しく把握するためには、減価償却費を毎月概算額でよいので、計上する必要があります。
これが正しい月次損益を把握するための要点のひとつです。
そのため、間接法で毎月「減価償却累計額」という科目に概算の減価償却費を計上します。
減価償却費は、製造原価と販売費及び一般管理費の両方にありますので、
製造に関係する固定資産の減価償却費は製造原価の「減価償却費」を使用し、
それ以外の固定資産の減価償却費は販売費及び一般管理費の「減価償却費」を使用します。
そうすると、減価償却費の月次の仕訳は次のようになります。
製造原価の 減価償却費 / 減価償却累計額 XXXXX円
販売費及び一般管理費の 減価償却費 / 減価償却累計額 XXXXX円
これを毎月計上するわけです。
月々は減価償却累計額に概算の減価償却費を計上する!
(2)決算時の仕訳
そして決算月を迎えれば、一旦、12ヶ月分の概算減価償却費をゼロします。
減価償却累計額 / 製造原価の 減価償却費 XXXXX円
減価償却累計額 / 販売費及び一般管理費の 減価償却費 XXXXX円
決算時には一旦、減価償却累計額をゼロする!
そのうえで、確定した減価償却費を、対象となる固定資産科目ごとに計上しなおします。
このときの相手科目は「減価償却累計額」ではなく、それぞれの固定資産科目となります。
製造原価の 減価償却費 / 建物 XXXXX円
製造原価の 減価償却費 / 機械・装置 XXXXX円
製造原価の 減価償却費 / 車両・運搬具 XXXXX円
製造原価の 減価償却費 / 工具・器具・備品 XXXXX円
販売費及び一般管理費の 減価償却費 / 建物 XXXXX円
販売費及び一般管理費の 減価償却費 / 機械・装置 XXXXX円
販売費及び一般管理費の 減価償却費 / 車両・運搬具 XXXXX円
販売費及び一般管理費の 減価償却費 / 工具・器具・備品 XXXXX円
減価償却累計額をゼロにしたうえで、正確な減価償却費を計上しなおす!
(3)減価償却費の計算方法
まず、減価償却は、以前は「取得原価の10%まで」とされていました。
しかし、2007年4月の改正で、2007年4月以降から使用開始した固定資産資産からは、「残存価額はゼロ」として計算してよい
ということになりました。 覚えておきましょう。
そのうえで、減価償却費の計算方法は2通りあります。
①定額法
定額法は、毎月あるいは毎年、定額で減価償却費を計算する方法です。
定額法による減価償却費 =(取得原価-残存価額)÷耐用年数
※2007.04以後の固定資産は残存価格ゼロです。
②定率法
定率法は、定められている償却率で計算する方法です。
定率法による減価償却費 =(取得価額-減価償却累計額)×償却率
なお、定額法と定率法の併用や都合による変更はできません。
このように文章で説明すると、まだ難しそうに感じるかもわかりませんが、実際にやってみるとカンタンなことです。
要点は ①毎月の減価償却費は「減価償却累計額」を相手科目として概算計上する。
②決算になると一旦、「減価償却累計額」を減価償却費に戻す(ゼロする)。
③正確な減価償却費を、各固定資産を相手科目に計上しなおす。
たったこれだけのことです。
なお、冒頭でも説明しましたように、減価償却費は計算上の費用計上だけですから、実際には現金は支出されていません。
そのため、資金的には影響しません。 このことはしっかり頭に入れましょう。
3 減価償却費の読み方
減価償却費に関して、特に読み方というものはありませんが、大事なことは減価償却費に対する考え方です。
減価償却費は何度も言うように「資金の支出」を伴いませんので、仮に減価償却費が100万円あった場合、
利益は100万円減りますが、手元資金は減りません。
このことは何を意味しているのかといえば、
減価償却のたびに機械設備の寿命は縮まり、入替時期が迫って来ていることを意味しています。
したがって、「減価償却費分、運転資金がラクになる!」と考えるのではなく、
「減価償却費分、次期の入替に備えて現預金の積み立てをしておく必要がある!」と理解することが大事です。
減価償却費分を積み立ててておけば、次回の入替えは他人資本に頼らずに、自己資本で設備投資ができるようになっていきます。
減価償却費分は積み立てておくことが大事!
このように会計に対する理解が深まれば深まるほど、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。
会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているのです。
だから、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてきます。
もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のものです。
現代は、管理会計と会計で読む力がいま問われているのです。 会計はたのしい!