562.科目の読み方⑱ BSまとめ 1/2
2022年4月22日
これまで17回に分けて、『科目の読み方』を説明してきましたが、最後にB/SとP/Lをまとめ、終了させたいと思います。
まず今回は、「BSのまとめ 1/2」です。
はじめに
まとめに入る前に、まず次のことを理解してください。
1.資産とは運用資産である
①現預金を除く資産は、「財産」ではなく、「運用資金」であるということです。
だから、「現・預金以外は、100%回収できる保証はない!」ことを理解しておかねばなりません。
②また、資産は実際以上に膨らむ傾向があります。
特に、売上債権・棚卸資産・固定資産の中には、すでに貨幣価値のないものが含まれていることが往々にあり、
「資産の額=貨幣価値とはならない場合も多い」ということを知りましょう。
③したがって、資産を貨幣価値で評価すると、帳簿よりも下がる場合が多いのです。
2.負債とは調達資金である
①負債は、確かに「借金」でもありますが、一方では「調達資金」でもあります。
②したがって、負債はうまく活用することで、自己資金だけでは実現出来ない、大きな事業をすることが可能になります。
③負債はうまく活用すること、きちんと返済することが大事なのです。
3.純資産とは自己での調達資金である
①純資産は、自社自身が調達した「調達資金」です。
②しかし、その金額はすべてが資金(現預金)であるわけではないことを知りましょう。
③したがって、純資産はなるべく現預金で持つことで柔軟な経営を可能にします。
4.売上とは資金源泉である
①売上は資金の源泉、つまり、おカネの元です。
②現金商売であれば違いますが、その他の商売では、売上=資金(おカネ)ではありません。
③売上は売掛回収をして、初めて資金(おカネ)となるものなのです。
④したがって、売上は回収することが大切です。
5.費用とは資金使途である
①売上原価・販管費など、多くの費用がありますが、それらはすべて「資金使途」です。
②いろいろな費用は、いずれ資金(おカネ)を社外へ流出させます。
③したがって、費用を抑えられれば、資金繰りは良くなります。
この運用・調達・源泉・使途の4つことを理解することが
あなたの経営技術を向上させます!
1 手元資金
①手元資金とは、現金と預金の合計です。
②現金はあまり多くの金額を手元で持つものではありません。
企業規模や業種にもよりますが、通常は数万円から十数万円で十分です。
それ以上現金があると、リスク上の問題も発生し、ついつい現金管理もゆるくなってしまいます。
③「資金繰り」と言えば、資金繰り表やキャッシュフロー計算書を思い浮かべる方が多いですが、
それらは結局のところ、いま、いくらの現預金があるのかということです。
つまり、表現は違えども、現預金残高と同じです。
その意味では、手元資金の管理をしっかり行えば、過去管理や資金収支分析である資金繰り表やキャッシュフロー計算書は
不要と言えます。
④今期末の資金有高を常に予測管理したいというならば、前年の現預金出納帳をEXCELシート化し、
そのシートを今年の実績で更新していきます。
そうすると、簡単に期末までの資金繰り予測ができるようになります。
※企業活動は毎年ほぼ同じ活動の繰り返しであり、これで十分、資金繰り予測ができます。
⑤手元資金の有り高を評価するためには、平均月商と比較することが基本です。
月商は会社の生活費であり(赤字の場合は不足する)、その平均月商何か月分の手元資金があるのかで、評価します。
これを『手元流動性比率』と呼びますが、最低でも平均月商3カ月以上の手元資金があるように経営することが大事です。
2 売上債権
①売上債権とは、受取手形と売掛金の合計です。
②受取手形はなるべく受け取らないように得意先と交渉しましょう。 それが現在のトレンドです。
③売上債権は多ければ多いほど良いというものではなく、企業ごとに適切な量というものがあります。
その適切な量とは「前月売上高」であり、通常の企業取引では1カ月分程度です。
つまり、翌月に回収するということです。
※建設業界など、古い体質の業界ではもっと回収期間は長いかもわかりません。
④売上債権は長く持っていれば持っているほど、不良債権化していきます。
それは「なぜ、支払われないのか」と考えれば、わかります。 答えは資金繰りが悪いからです。
だから、支払期日には必ず入金していただくように、催促することが大事なのです。
催促することは相手に失礼なことではなく、むしろ相手からの信用につながることを知りましょう。
※しっかり管理されている会社だと評価されます。
⑤大事なことは、売上債権は財産でもなんでもなく、紙切れ状態の運用資産であると理解することです。
極端にいえば、売上債権が多くあるほど経営リスクは高く、適正であれば経営リスクは低いということです。
しかし、少な過ぎれば、売上が少ないなどの経営リスクが、また生じて来ます。
3 棚卸資産
①棚卸資産とは、在庫のことです。
②在庫とは、これから売れるかもしれない商品であると同時に、売れ残った商品でもあります。
③したがって、売れ残った商品である過剰在庫を少なくすることが、売上原価を抑えて、粗利益率を向上させる秘訣です。
④より正確な月次損益を計算するためには、毎月棚卸高を洗い替えする必要があります。
※棚卸高の洗い替えとは、期首月には期首棚卸高と月末棚卸高を計上し、
翌月からは月初に月末棚卸高を戻し、月末に再計上することをいいます。
⑤棚卸資産の適切な有り高は、業種によって違いますが、一般的には売上14日分程度の在庫量と考えられます。
4 運転資金
①運転資金とは、売上債権と棚卸資産の合計額です。
この金額が販売活動のために運用している資金合計となります。
②それに対して、運転資金調達高とは、買入債務(支払手形+買掛金)の合計額です。
この金額が販売活動を通じて調達している資金合計となります。
③したがって、この両者のバランスが取れていれば、「運転資金には問題がない」と言えます。
④それを算式化すると「要調達運転資金=(売上債権+棚卸資産)ー買入債務」となります。
この要調達運転資金だけ運転資金が不足していることを示しており、この不足分は手元資金で補うことになります。
手元資金が足りない場合は、運転資金を金融機関から借りることになります(短期借入金)。
⑤さらにこの要調達資金を年商で割れば、「運転資金要調達率」が求められ、
売上を増やそうとする場合の必要運転資金(=増加目標売上高×運転資金要調達率)が推測できるようになります。
5 固定資産
①固定資産とは、製造するため機械設備などのことです。
②固定資産を最大限に活かし、最小に抑えることが出来れば、高効率な経営体質に変貌させることが出来ます。
③そのためには常に、「売上高÷固定資産=固定資産回転率」で、固定資産の生産性を測る必要があります。
この固定資産回転率も業種によって大きく変化しますが、最低でも4回転は目指したいところです。
④また固定資産の導入には多額のおカネが必要となりますが、その資金の出所もしっかり押さえたいところです。
固定比率 =固定資産÷純資産×100
固定長期適合率=固定真÷(固定負債+純資産)×100
固定比率は、できれば200%以内に抑え、固定資産購入資金の約半分は自己資金で負担したいところです。
固定長期適合率は、100%未満でなければいけません。
これが100%を超えていると、自己資本と長期借入金だけは足りず、無理な固定資産投資をしていることになります。
こんな言い方ではピンと来ないかもわかりませんが、住宅を一部、サラ金から借りて購入していると考えれば如何ですか。
このように言い換えれば、如何に無理な固定資産投資をしているのかがわかります。
このように、会計に対する理解が深まれば深まるほど、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。
会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているからです。
だから科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてくるようになります。
もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のものです。 管理会計と会計で読む力がいま問われているのです。
会計はたのしい!