563.科目の読み方⑲ BSまとめ 2/2
2022年4月30日
今回は、前回の続きである「BSまとめ 2/2」です。
まず、次のことを確認してください。
資産は着ぶくれになることがあるが、負債は正味負債です!
資産は常に実際より多くあるように見えて、財政状況が良く見えるという意味です。 そのことをまず、よく自戒しましょう。
1 買入債務
①買入債務とは、支払手形と買掛金のことです。
②支払手形は使わないことが賢明です。
理由は、支払期日が待ったナシのため、融通が利かないからです。
③買入債務は運転資金の面から見れば、「運転資金の資金調達」となります。
資金繰りをラクにする半面、支払までの期間が短いことや在庫などの関係もあり、多くすることはできません。
④買入債務は1日当りの平均売上原価と比べることで、仕入れの分量を読むことが出来ます。
そのことを『買入債務回転期間』(=買入債務÷1日当りの平均売上原価)と言います。
この回転期間は業種・業態によって違いはありますので、一概にはどの程度とはいえませんが、
しかし2週間程度に抑えたいものです。
2 消費税
①消費税に関する科目は、税抜き処理をしていれば、流動負債に「仮受消費税」が、流動資産に「仮払消費税」が表示されます。
②「仮受消費税」とは、国に代わって、顧客から預かっている消費税のことです。
したがって、納付するまでの間は、資金調達していることになりますので、流動負債に表示されているわけです。
③「仮払消費税」とは、国に代わって仕入先に仮払している消費税のことです。
したがって、納付するまでは仮払消費税として資金運用していることになりますので、流動資産に表示されるわけです。
④基本的に、仮受消費税から仮払消費税を差引した消費税額が消費税納付額となります。
この考え方を『本則課税方式』と呼びます。
⑤ただし、課税売上高が5000万円以下の事業者には、『簡易課税方式』も認められていますので、
『みなし仕入れ率』で簡単に納付消費税額を計算することも出来ます。
《事業区分とみなし仕入率》
(1)第一種事業(卸売業) 90%
(2)第二種事業(小売業) 80%
(3)第三種事業(製造業) 70%
(4)第四種事業(飲食店業・その他(1)(2)(3)(5)(6)以外の事業) 60%
(5)第五種事業(金融業・保険業・運輸通信業・飲食店業を除くサービス業) 50%
(6)第六種事業(不動産業) 40%
簡易課税方式で消費税額を計算するためには、「簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。
また「簡易課税」を一旦選択すると、2年間は変更できません。
⑥消費税の納付は理屈で考えると、顧客から納付額を預かっているわけですから、必ず納付できるはずのものです。
しかし、現実には多くの事業者が「滞納している」という事実があります。
なぜ、そのようなことに陥るのかと考えれば、それは、預かっている消費税額を運転資金とごちゃ混ぜにして、
運転資金として使ってしまっているからです。
したがって、預かった消費税を、別途、預金に積み立てしておくことが大切です。
⑦消費税の読み方は、常に仮払消費税と仮払消費税の差額を確認し、それと手元資金を比べることが大事です。
⑧また、2023年(令和5年)10月から『インボイス制度』に移行されますので、さらなる注意が必要です。
3 借入金
①借入金には、流動負債に分類される「短期借入金」「1年以内返済長期借入金」と、固定負債に分類される「長期借入金」の
3種類があります。
②短期借入金は、運転資金目的で金融機関から融資を受けた借入金のことです。
③長期借入金は、設備投資目的で金融機関から融資を受けた借入金のことです。
しかし長期借入員の中にも、1年以内に返済する部分はありますので、
債務状況を正しく読むため「1年以内返済長期借入金」として長期借入金と区分けし、流動負債に分類します。
このように経営管理上「1年以内返済長期借入金」に分ける意味がありますので、税務上はともかく、
経営面からは分ける必要があります。
④借入金は債務でもあり、さらに金利も負担し、返済期日厳守の「他人資本」ですが、しかし、自己資金だけでは実現できない、
大きな事業を展開することを可能にしてくれる調達資金でもあります。
したがって、過度に恐れないで、借入金を有効活用することが大切ですが、一方で返済管理をきちんとすることも重要です。
⑤その返済管理のため、借入金の読み方が重要なのですが、基本的には借入金額のボリュームと返済期間の予測から読みます。
⑥借入金額のボリュームは『借入金月商倍率』(=借入金合計÷平均月商)で読みます。
安全な経営を重要視するならば、常に3ヵ月以内であるように借入総額を抑えます。
⑦借入金返済期間の予測は『債務償還年数』(=借入金総額÷営業利益)で読みます。
これは最長でも、10年以下になるようにマネジメントしましょう。
債務償還年数は最大の返済返済原資で計算していますので、あくまで机上の計算です。
しかし、これが10年以上になるということは、「返済について先が読めない状態」と理解することが大切です。
4 その他の流動負債
①その他の流動負債には多くの科目がありますが、基本的な科目は、未払金・未払費用・預り金・賞与引当金などです。
②未払金とは、単発的に発生する債務です。
もし、1年を超えて返済する場合は、固定負債の長期未払金にします。
③未払費用とは、常時発生する債務で、通信費・水道光熱費・地代家賃・新聞代などを指し、
基本的に、毎月、翌月に支払する費用です。
④預り金とは、自社の役員・従業員などが負担すべき費用を、一時的に預かる科目です。
具体的には、本人負担分の社会保険料や源泉税・市区町村民税などがあり、納付漏れが生じないように気をつけます。
⑤賞与引当金とは、夏と冬などに支給する賞与を、月次費用化する科目です。
大切なことはただ計上するだけでなく、賞与引当金に見合う手元資金を持つことです。
⑥これらその他流動負債の読み方で大切なことは、
『流動比率』(流動資産÷流動負債×100)よりも、『当座比率』(当座資産÷流動負債×100)、さらには『手元資金比率』
(手元資金÷流動負債×100)で読むことです。
5 固定負債
①固定負債とは、返済期間が1年以上に猶予されている他人資本のことをいいます。
この他人資本の運用目的は、設備投資(固定資産)です。
さらに、まだ余裕があって、営業資産にも回っているなら、より結構なことです。
②固定負債の主な科目としては、長期借入金とか、長期未払金・役員借入金・退職給付引当金などがあります。
③固定負債の読み方は、主にその運用状況から読みます。
『固定長期適合率』(固定資産÷(長期借入金+純資産)×100)は、設備投資が設備投資目的の資金だけで
運用されているのかを読むことが出来ます。
100%近いあるいは100%超えているようなら、資金的に無理な設備投資をしていることを示しています。
早急に、追加の長期借入金融資を受ける必要があります。
『固定比率』(固定資産÷純資産×100)は、自己資本で設備投資の何割程度を賄っているのか読むことが出来ます。
金利負担を減らすためにも、半分程度は自己資本での投資でありたいものです。
6 純資産
①純資産とは、自己資本のことです。
具体的には、資本金とこれまで稼いだ繰越利益剰余金です。
②経営のフリーハンドを多く持つためには、繰越利益剰余金はなるべく手元資金で持つことが大切です。
そうできれば、さまざまな資金需要に対して、対応することが可能となります。
③なお、会社が倒産するのは、売上が減少するからでもなく、借入金が多くあるからでもありません。
返済(特に金融機関に対する返済)が出来なくなるからです。
その意味では、売上減少も借入増加もその引き金になるわけです。
このように、会計に対する理解が深まれば深まるほど、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。
つまり、会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているのです。
だから、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてくるようになります。
もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のもの、現代・近未来は管理会計と会計で読む力がいま問われているのです。
会計はたのしい!