564.科目の読み方⑳ PLまとめ
2022年5月8日
今回は「PLまとめ」です。
PLのポイントは売上拡大より売上総利益を増益させることです!
1 売上高
①売上高は毎年増収させることが基本ですが、それを追い求め過ぎないことも大切です。
あまり増収に拘り過ぎると、いつしか、未確定の売上を先立って計上してしまうなど歯止めがかからなくなり、
それがいつしか架空売上につながり、よくニュースでも聞く不正会計に陥る危険性が高くなるからです。
②売上は得意先別に管理することが当たり前です。
※一般消費者を相手に販売している業種の場合は、商品別などに管理します。
③さらに、得意先別管理と併せて、部門別などを利用して、継続売上と新規売上に分けて管理することも大事です。
※単純にいえば、増収目標が新規売上目標になります。
④売上高の読み方は、次の4点が基本です。
1、前年と比べてどうかを読む
2.得意先別(または商品別)にはどうかを読む
3.経営計画に対してどうかを読む
4.継続・新規ではどうかを読む
2 売上原価
①売上原価とは、商品仕入と製造原価の合計です。 この考え方を『全部原価』ともいいました。
②製造原価は、材料費・労務費・外注加工費・その他製造原価に分かれます。
③売上から売上原価を差引したものを「売上総利益」といいます。
売上総利益は売上総利益率も大事ですが、成熟社会である現代では、売上総利益額の増益が一番大事です。
④売上原価の中で、商品仕入と材料費だけを『直接原価』といいました。
また、売上高から直接原価を引いたものを『限界利益』あるいは『付加価値額』といいました。
⑤売上原価を抑えることが、売上総利益を増益に導く基本です。
その売上原価を抑えるためには、「在庫」という大道具部屋の整理整頓が非常に大事です。
⑥実地棚卸は、不良在庫を少なくするためにも、また売れ筋を掴むためにも大事な作業です。
⑦またここでも売上総利益の増益に拘り過ぎると、在庫調整に手を付けることになり、不正会計につながります。
注意しましょう。
3 人件費
①人件費とは、役員報酬と給与・賞与及び社会保険料の法定福利費などの合計です。
②特に中小企業の場合は「人件費が低い」と指摘され続けています。
その意味では「人件費の増額」自体が、ひとつの大きな経営課題となります。
③人件費は従業員の生活基盤を成すものです。
その意味では企業としての”社会的使命”の一丁目一番地であり、かつ士気向上の基盤でもあります。
人件費をできる限り増やす経営努力を実際に行い(考えているだけではダメ)、かつその努力を従業員に見せ、活力ある職場に
します。
④人件費の読み方は『労働分配率』です。
ただし、一括りで読むのではなく、正社員・パート・アルバイトそして役員など、それぞれのカテゴリーごとに確認し、
そのバランスや昇給を考える必要があります。
⑤売上総利益又は限界利益から人件費を除いたものを『可処分利益(処分可能な利益)』といいます。
4 その他販管費(固定費)
①その他販管費とは、総費用から売上原価又は直接原価と人件費を除いた費用です。
②その中で減価償却費は特殊で、支払を伴わない費用であることを理解します。
また、減価償却費は次回の設備投資資金であることも認識しましょう。
したがって、支払を伴わない減価償却費で捻出された資金を、運転資金に回して使ってしまうのではなく、
設備投資資金として積み立てすることが大事です。
③その他販管費を抑えることが人件費へ回せる資金などを増加させることにもなります。
ですから、全員で「冗費節減」を心がけます。
④可処分利益からその他販管費を差引したものを『営業利益』といいます。
この営業利益が本業による利益ですので、手元資金を増やすためにも増益させたいものです。
5 営業外損益
①営業外損益とは、本業以外で生じた営業外収益と営業外費用のことです。
②営業外収益は『定款』によって決まります。 定款で定められた事業以外による収益が、営業外収益となります。
③営業利益から営業外損益を足し引きしたものを『経常利益』といいます。
④よく『節税対策』という名のもと、経常利益の状況によって、専門家から期末に必要と思われるものを購入することを
勧められる場合がありますが、これを繰り返している限り、安全性の高い経営は実現出来ません。
本当に必要なものを購入することはいいのでしょうが、必要以上のものを購入することは「浪費」です。
また、資金繰りを改善していくためには、必ず相応の納税をしないとできないことも知りましょう。
納税ナシで資金を貯める、そんなことはできません!
6 変動損益計算書分析
①変動費とは、売上高の増減に比例して増減する費用のことであり、基本的には直接原価のことです。
たとえば、商品仕入や材料費はよく売れるものに関しては仕入を増やしますし、あまり売れないものは仕入を控えます。
つまり、直接原価は売上高の増減に「比例する」ということです。
②固定費とは、売上高の増減に関係なく固定的に発生する費用のことであり、変動費を除いたすべての費用のことです。
たとえば、人件費は売上が減ったからといって、従業員の生活を守る意味からも減らすわけにはいきません。
水道光熱費は少しは減少するかもわかりませんが、基本的には基本料金なども発生しますので、あまり変化はありません。
つまり、直接原価以外は、売上の増減に関わらず「固定的に発生する」ということです。
③損益分岐点売上高とは、「損」と「益」が分岐する売上高、収支トントンの売上高ということです。
収支トントンの売上高とは、人件費や固定費はなんとか賄うことが出来る、利益ゼロの売上高です。
その損益分岐点売上高は、固定費を限界利益率で割ることで求められます。
固定費÷限界利益率=損益分岐点売上高
※固定費 =売上高ー(変動費+経常利益)
限界利益率=(売上高ー変動費)÷売上高×100
④損益分岐点比率とは、損益分岐点売上高が実際の売上高に対して、どのくらいかということです。
それによって、損益分岐点売上高に対する余裕度も確認できます。
損益分岐点売上高÷売上高×100=損益分岐点比率
※損益分岐点比率は低いほど良く、100%を超える場合は赤字経営です。
④経営安全率とは、損益分岐点売上高に対する余裕度です。
100%ー損益分岐点比率=経営安全率
※仮に経営安全率50%であれば、売上高が半減しても赤字にはならないということです。
経営安全率が低いと「経営安全性が低い」ということになり、この経営安全率分だけの売上が下がれば赤字経営に転落します。
⑤限界利益率とは、自社の付加価値率とも言えるものです。
限界利益÷売上高×100=限界利益率
又は100%ー変動費比率 =限界利益率
⑥変動費比率とは、自社の直接原価率とも言えるものです。
変動費比率を下げられれば、限界利益率は上がりますので、経営により安全性を持たせられることになります。
変動費÷実売上高×100=変動費比率
⑦労働分配率とは、限界利益の内、どのくらい人件費に充てているかということです。
表現を変えれば「従業員士気向上策率」ともいえなくもありません。
人件費÷限界利益×100=労働分配率
※人件費=従業員給与賞与+役員報酬+法定福利費
この労働分配率は、従業員・パート・アルバイト・役員など、それぞれに分けて把握すべきものです。
⑧ここまで数値が揃うと、来期の必要売上高シミュレーション(試算)もできます。
来期の必要利益や人件費・その他固定費のグランドデザインができれば、必要売上高を試算することが出来ます。
(必要利益+固定費)÷限界利益率=必要売上高
*注1:必要利益は、内部留保資金+借入返済資金+納税資金などから求めます。
*注2:固定費は、昇給込みの人件費と各経費の予算から求めます。
このように、会計の理解が深まれば、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。
会計のルールには、健全な経営をしていくための仕組みが隠されているからです。
したがって、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてくるようになります。
もう、どんぶり勘定や勘は、はるか過去のものです。
いまは管理会計と会計で読む力が問われているのです。 会計はたのしい!