571.リスクヘッジ仕訳 減価償却費
2022年6月26日
更新日:2022.07.26
会計には経営をリスクから守る仕組みがあります。そのことを「リスクヘッジ」といいます。
リスクヘッジとは、起こりうるリスクをある程度予測し、そのリスクに対応できる体制をあらかじめ取っておくことをいいます。
そこで、会計には次のような仕組みがあります。
1.資金の調達と資金の運用の面から企業の財政状況を貸借対照表として明らかにする
2.資金の源泉と資金の使途の面から事業の損益状況を損益計算書として明らかにする
3.損益計算書の当期利益が貸借対照表の繰越利益剰余金へ組み込み、B/SとP/Lを結び付ける
4.引当や償却・棚卸などの特殊な仕訳をすることで、健全な経営を執行するためのリスクヘッジをする
このような仕組みで、会計は企業を健全な経営に導くようになっています。
今回、『リスクヘッジ仕訳』の第3回目は『減価償却費』です。
1 減価償却費とは
減価償却費とは、購入した設備費用を一時的に購入した事業年度だけの費用としないで、
その使用期間における費用と考えて、正確な期間損益を見るための「当期収益に対応する費用」を計上するルールです。
したがって、その使用期間中は減価償却費として計上し、当期収益に対応する費用として計上します。
2 減価償却費の仕訳
減価償却費の仕訳の仕方には2つの方法があります。
ひとつが「直接法」、もうひとつが「間接法」です。
(1)直接法による減価償却費の仕訳
【決算時】 借方:減価償却費 / 貸方:固定資産の対象科目
※解説:決算のときに該当する固定資産の減価償却費を計上する方法です。
この仕訳でB/Sの該当する固定資産は減額され、その減額分がP/Lの減価償却費に計上されます。
しかし、この方法には2つの問題点があります。
①固定資産の取得価額がわからなくなってしまう
減価償却費を該当する固定資産から直接減額するために、固定資産の取得価額がわからなくなってしまいます。
したがって、減価償却累計額を「注記」に表示しなくてなりません。
②より正確な月次損益が把握できない
直接法による減価償却費の計上では、決算のときに一括して1年分の減価償却費を計上するため、
月次では減価償却費を考慮した正確な月次損益は把握できません。
そこであるのが、間接法による減価償却費の計上なのです。
(2)間接法による減価償却費の仕訳
【月 次】 借方:減価償却費 / 貸方:減価償却累計額
※解説:毎月、概算の減価償却費をP/Lの減価償却費とB/Sの減価償却累計額に計上します。
この仕訳で、月次損益も減価償却費を含めた損益が把握できるようになります。
同時にB/Sの減価償却累計額にも計上されますので、固定資産は減価償却費分を減額した残高になります。
【決算時】 借方:減価償却累計額 / 貸方:減価償却費
※解説:一旦、これまで概算計上した減価償却費と減価償却累計額をゼロクリアします。
借方:減価償却費 / 貸方:減価償却累計額
※解説:あたらめて正確な減価償却費をP/Lに計上し、同じく減価償却累計額にも計上します。
これで固定資産の各科目は常に取得価格が表示されることとなり、同時に今まで計上してきた減価償却費の累計額も
減価償累計額でわかるようになります。
このように見ると、管理会計的には「間接法」の方が優れていることがわかります。
また、減価償却累計額は各固定資産科目ごとに内訳管理すべきことはあらためて言うまでもありません。
減価償却費の計上は管理会計としては「間接法」を採用すべき!
3 減価償却費の重要なもう一つの意味
減価償却費とは、取得した設備購入費を、使用期間の「当期収益に対応する費用」として計上することですが、
この費用計上は、見方を変えれば「当該固定資産の消耗度を表している」とも理解できます。
固定資産の耐用年数に近づくとは入替時期が近づいていることを示す!
つまり、耐用年数期間が近づくに連れ、その固定資産の入替時期が迫って来ていることを示しているわけです。
この減価償却費は、利益からは減額されても、キャッシュアウトを伴っていないところに大きな特徴があります。
減価償却費は費用ではあるが、キャッシュアウトを伴っていない!
したがって、できれば減価償却費分のキャッシュは入替時期に備えて積み立てしておきたいおカネです。
その意味で、減価償却費相当分を預金科目を口座別管理にして、毎月、預金からその口座へ振替えるという会計処理を行い、
手元資金として減価償却費分を持っておけるようにマネジメントしたいものです。
そうすれば、次回の固定資産購入時は銀行借入に頼らずに自己資金で購入することが可能となり、固定比率や固定長期適合率などの
経営改善ができるようになります。
減価償却費分のキャッシュは次回の購入に備えて手元資金で持つことが大切!
このように、会計の理解が深まれば、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。
つまり、会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているのです。
したがって、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてくるように
なります。
もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のものなのです。
これからは管理会計と会計を読む力が、いま問われているのです。 会計はたのしい!
減価償却費分のキャッシュは次回の購入に備えて手元資金で持つことが大切!
このように、会計に対する理解が深まれば深まるほど、それだけ経営技術を向上させることが出来ます。
つまり、会計のルールには、健全な経営をしていくための意味が隠されているのです。
したがって、科目の読み方や意味がわかれば、健全な経営をする道すじが見えてくるようになります。
もう、どんぶり勘定や勘ははるか過去のものなのです。
これからは管理会計と会計で読む力がいま問われているのです。 会計はたのしい!