581.わかりやすく 損益の読み方

2022年9月4日

経営の環境は厳しく、「儲け」を出すことがますます難しくなっています。

考えてみれば、事業とは次の4ステージに分けられます。

 第一ステージ:自己資金を調達する

 第二ステージ:調達した資金を資産に投資する

 第三ステージ:その資産によって経営活動を行う

 第四ステージ:その経営活動によって新たな資金を得る

この繰り返しの中で事業は資金のやり繰りを行い、健全な事業を営んでいくものです。

そう考えると事業におけるいくつかの大切な要素が見えてきます。

その根本は「経営活動によって新たな資金を得ていく」ということができなければ、事業は続けて行くことが出来ません。

会計はその情報を『損益計算書』で提供しています。

そこで今回は、その「損益の読み方」についてわかりやすく考えてみましょう。

 

 

▶損益計算書の構造

まず、損益計算書の構造を見てみましょう。

損益計算書はもうご存知のとおり、

売上高-売上原価-売上総利益ー販管費ー営業利益ー営業外損益ー経常利益ー特別損益ー税引前当期純利益ー法人税等ー当期純利益

という順序で表示されていますが、それぞれについて見ていきます。

 

(1)損益には3つの収入源がある

この構造の中で収入源は「3つ」あります。それは、売上高と営業外収益と特別利益です。

これらは『資金の源泉』といいますが、最も重要なものは、言うまでもなく「売上高」です。

資金の源泉である収入源は「売上高」「営業外収益」「特別利益」の3つがある!

 

(2)損益には4つの費用がある

一方、支出される費用には「4つ」あります。それは、売上原価と販管費、そして営業外費用と特別損益です。

これらのことを『資金の使途』といいますが、最も管理しなければならないものは「売上原価」と「販管費」です。

資金の使途である費用には「売上原価」「販管費」「営業外費用」「特別費用」の4つがある!

この3つの収入源から4つの費用を差し引いたものが「新たな資金」となり、内部留保され自己資本に組み込まれていきます。

 

(3)損益には5つの利益が表されている

そしてこれらを組み合わせると「5つの利益」が算出されます。

それは、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益です。

この中で重要なものは「売上総利益」と「営業利益」です。

収入から費用を差引したものが利益であり

「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つがある!

 

 

▶それぞれの項目が意味すること

次にそれぞれの項目が意味することを考えてみましょう。

この「意味」を考えておくことが、損益を読みに際してたいへん重要なことなのです。

ですから、皆さんなりに意味を考えましょう。

 

(1)売上高

売上高とは、本業で得た収入です。

お客様が納得するから得られる資金でもあります。その意味では『お客様から支持のバロメーター』と言えなくともありません。

立ち上げた事業を順調に成長させたいのであれば、この売上高は基本的に毎年伸ばしていく必要があります。

なぜなら、年々、人件費をはじめ、経費は増えていくからです。また設備などの資金も必要となるからです。

したがって、マイナスであれば、行っているる事業のどこかに問題点があると理解しなければなりません。

売上高伸びの鈍化は事業のどこかに問題があることを示している!

 

(2)営業外収益

営業外収益とは、本業以外で経常的に得られている収益とよく説明されますが、端的にいえば、利息や配当などの財務活動で

得た収入です。

これがあまりにも大きい場合は、収入を得ているのですから良いともいえますが、本業を疎かにすることにもなりかねませんので、

その意味では注意も要します。いまや死語となりましたが、その昔「財テク」などと呼ばれたバブルの頃を想起しましょう。

 

(3)売上原価

売上原価とは、売上を得るために要した、仕入した商品や原材料、あるいはそれを加工するために要した費用のことです。

これらの費用は、いわゆる経費と区別して、売上原価と呼びます。

また、この原価には「直接原価」「間接原価」があることも認識しましょう。

直接原価とは、文字どおり、直接の原価で、仕入した商品や原材料のことをいいます。

間接原価とは、原材料を製品化するために要した費用のことをいいます。労務費や外注加工費やその他製造経費などがあります。

もし、売価が直接原価以下であれば、それは「真正出血」となります。売っても売っても儲かりません。

それが直接原価以上、売上原価以下であれば、それは「疑似出血」となります。儲けは少ないですがたくさん売れれば儲かります。

つまり、直接原価以上で販売できれば、販売数量によっては儲けられる可能性があるということです。

売上原価には「直接原価」と「間接原価」がある!

 

(4)販管費

販管費とは、売上原価以外の「販売費」と「一般管理費」のことです。

また「人件費」と「その他経費」という分け方もできます。

人件費を多くできれば、従業員さんの士気の向上や生産性の向上など、モチベーションを高くすることができます

それに対して、その他経費にはそのような作用やまた社内的な痛みもありませんので、抑えることができればそれだけ黒字経営化

しやすくなります

販管費には「人件費」と「その他経費」があり、人件費は社内モチベーションにつながる!

 

(5)営業外費用

営業外費用とは、本業以外で経常的に発生する費用と説明されますが、端的にいえば、借入金などの金利のことです。

これが大きい場合は借入金に依存している経営体質であることを示しており、早急に借入を減らす方策を講じなければなりません。

営業外費用の大小は経営の借入金依存体質度を示している!

 

(6)売上総利益

売上総利益とは、原価を除いた利益であり、人件費やその他経費の支払い原資と内部留保の元となるものです。

売上総利益率を高めることも大切ですが、より重要なことは如何にして総利益額を増額させるか、柔軟な思考で考えることです。

この売上総利益が「給料支給」「経費支払」「営業利益」に分配される!

 

(7)営業利益

営業利益とは、本業における利益です。

本業による儲けですから、黒字であることが原理原則です。

営業利益は黒字が当たり前、赤字は問題提起されていると理解する!

 

(8)経常利益

経常利益とは、事業として経常的に確保できる利益という意味です。

営業利益から営業外収益を加え、金利を負担した後の利益です。

 

(9)当期純利益

当期純利益とは、事業における1年間の最終利益であり、これが申告書などに結び付きます。

 

 

▶損益計算書の限界

さて、損益計算書について見て来ましたが、損益計算書には限界もいくつかあります。

そこのことを補足しないと、経営状態の真の姿は見えて来ません。

 

問題点1 事業で付けた付加価値がわからない

まず、最初の問題点は付加価値です。限界利益ともいいます。

損益計算書の原価には直接原価のほかにもさまざまな間接原価が含まれていますので、シンプルな付加価値がわかりません。

そのことによって、価格戦略を始めとする柔軟な戦略思考を妨げ、またシミュレーションも出来ません。

そこで直接原価を把握する必要があります。

  直接原価 =月間商品仕入高+月間材料仕入高

  直接原価率=直接原価÷売上高×100

この直接原価を計算するにあたっては棚卸などは考慮しません。

今月の売上に対して、今月いくら仕入したのかという実にシンプルな考え方です。

そうすると付加価値が計算できます。

  付加価値 =売上高ー直接原価

  付加価値率=付加価値÷売上高×100

 

問題点2 シミュレーションができない

第2の問題点は、損益計算書では必要売上高とか目標売上高のシミュレーションができないということです。

これも直接原価率や付加価値率を把握することで、残り必要な売上高とか、来期の目標売上高をシミュレーションすることが

できます。

  残り必要な売上高=(残り必要な固定費+残り期間の必要利益)÷付加価値率

   ※残り必要な固定費とは、人件費(給与・賞与・役員報酬・法定福利費)とその他の費用の合計です。

  来期の目標売上高=(人件費+その他の費用+借入金返済+内部留保)÷目標付加価値率

   ※人件費等はすべて来期の予定額です。

 

問題点3:経営安全率などがわからない

第3の問題点は、損益計算書では損益の分岐点比率や安全率などがわからないということです。

これも直接原価率や付加価値率を把握することで、損益分岐点比率や経営安全率を把握することができます。

まず、損益分岐点売上高を算出します。

  損益分岐点売上高=実績固定費÷実績付加価値率

   ※実績固定費には、利益は含まれません。

そして、損益分岐点比率を算出します。

  損益分岐点比率=損益分岐点売上高÷実績売上高×100

   ※赤字経営の場合は100%を上回ることになります。

最後に経営安全率を算出します。

  経営安全率=100%ー損益分岐点比率

   ※この経営安全率が赤字に陥るまでの余裕率となります。

    仮に経営安全率5%なら、5%売上が落ちても赤字にはならないことを示しています。

 

その他にもいろいろと損益計算書の限界はありますが、それぞれ感じることがあればお調べください。

 

 

このように損益計算書に対する造詣が深まれば、経営技術が上がり、それだけ安定した経営ができるようになります。

ますます経営環境が複雑になる中、経営者に求められる経営スキルは高くなっています。