590.実務的な経営分析 手元資金

2022年11月6日

再更新:2022.11.29

ますます経営環境が混沌化している中で、間違いのない経営の舵取りを行うためには、会計識字力を向上させて、

会計が示す経営の状況を読み取ることが大切だ。

そのために私たちは毎日会計処理を行い、月次試算表を作成し、最終的に決算書や申告書に結びつけている。

 

確かに「税務申告があるから会計処理を行う」ということが大きな動機になっていることは事実だが、

いまこそ、その考え方を「会計を毎日の経営に活かす」ということに変えることが重要だ。

そのように会計を活かして経営をしている企業はどちらかといえば少ないように思われるが、

しかし、堅実な経営を続けている企業は「必ず会計を日々の経営に活かしている」ということもまた事実だ。

 

堅実な経営をしている企業は会計を重要視している!

 

そのようにするためには、月次試算表を作成することに終始するのではなく、月次試算表が読めなくてはならない。

その標準的な読み方のことを、「経営分析」とか「財務分析」という。

今回は、そんな月次試算表や決算書の読み方である「経営分析」を、実務的な立場から考えて紹介する。

なお、「会計を読む」というと「決算書を読む」と思われている方が多いかも知れないが、

変化が早い現代社会においては「月次試算表を読む」ことであるということをお忘れなく!

 

会計を読むことは「月次試算表」を読むことデス!

 

 

1 自社の「キャッシュ状況」を読む

(1)キャッシュの概要

自社のキャッシュとは「現金と預金の合計」のことをいう。

売上債権は、近くキャッシュになる存在ではあるが、まだキャッシュではない。

その意味では売上債権は、その前に「確実に回収する」ことが大事だ。

 

では、自社のキャッシュの残高をどう読めば良いのか?

それは、事業における「毎月の生活費」と比べることだ。事業における毎月の生活費とは「平均月間売上高」だ。

事業はこの「平均月間売上高」を元に、仕入コストを支払い、そして人件費やそのほかの経費も支払う。

さらに借入していれば、借入金利も支払い、残った残高が「経常利益」となる。

したがって「赤字」とは、事業の生活費(売上高)が足りてないことを示している。

 

赤字とは生活費が足りないことを示している!

 

その帳尻を合わせるためには、売上を増やすか、原価を節約するか、経費を削るか、人件費を我慢するかなどの努力を

しなくてはならない。

「経常利益」からは、さらに税金の納付や借入金を返済を行う。

したがって、赤字ということは、税金や借入金が支払えないことを表わす。

 

赤字では税金や借入金を支払うことは出来ない!

 

ではどうするのか?

それは、もともとあった手元の資金から支払うか、それでも足りない場合は、経営者が自己資金で支払うしかない。

一方、経常利益から税金や返済を支払えた場合は、その残った金額が「貯蓄」という内部留保へ回り、はじめて事業資金が

増えるという仕組みになっている。

 

内部留保が確保できてはじめて事業資金が増える!

 

ただし、債権の回収がすべて出来ないと実質の「平均月間売上高」は少なくなるので、きちんと回収することが大事だ。

 

(2)キャッシュの状況を読む

そんなキャッシュの状況を読むには、「平均月間売上高」何か月分のキャッシュがあるのかが重要なポイントだ。

それ指標にして、手持ちキャッシュを高めていくように経営を操作する。

そこで問題は「平均月間売上高に対してどのくらいキャッシュがあればよいのか?」ということだ。

書籍を読むと、2カ月分とか3カ月分とか書かれていることが多いようだが、数年前のコロナ感染拡大のときのことを

思い出せば、それでは不十分なことに気づく。

そんな経験が、大企業において、「内部留保の充実」に努めてさせている。

当然のことながら、われわれの事業においてももう少し積み上げていきたいものだ。

ただし、従業員の給与水準などとのバランスにも気を配ることが大切である。

 

自社のキャッシュ状況を読む=(現金+預金)÷平均月間売上高=手元資金月商倍率