592.実務的な経営分析 当座・流動資産
2022年11月18日
3 自社の当座・流動資産の状況を読む
会計上、流動資産は、当座資産・棚卸資産・その他流動資産に区分されていますが、
実務的には、現預金・売上債権・棚卸資産・その他流動資産に区分されていると考えた方がわかりやすい。
(1)流動資産の詳細
現預金とは、何も運用していない資産であり、いつでも支払手段として使え、「キャッシュ」とも呼ばれる。
これが会社の資金残高だ。
売上債権とは、債権として運用しているものであり、期日が到来すれば基本的には「キャッシュ」に変わる資産だ。
しかしコロナやウクライナ紛争あるいは円高など先行き不透明な世の中だから、入金確認をする必要がある。
棚卸資産とは、まだ売れていない商材だ。
これから販売できれば「売上債権」に変り、さらに期日が来れば「キャッシュ」に変わる。
したがって、売上債権よりキャッシュになるステップが一つ多い資産だ。
しかし長く商売をしていると、棚卸資産にはまだ売れていない商材だけではなく、もう売れない商材も含まれることもある。
だから、もう売れない商材をなるべく少なくなるように経営することが大事だ。
その他流動資産とは、現預金・売上債権・棚卸資産以外の流動資産であり、基本的には誰かに貸している資産が多い。
このその他流動資産の特徴は、ほとんどが経営には関係がない資産が多いということだ。
だから、その他流動資産はなるべく少なくすることが経営のポイントだ。
そのような特徴がある流動資産だが、会計上は「1年以内に資金化できる資産」と定義されるので、
会社の支払能力を測るバロメータになる。
そのなかで十中八九、間違いなくキャッシュになる流動資産である、現預金と売上債権を合わせて、特に「当座資産」と呼ぶ。
したがって、流動資産は次のように表現できる。
総支払原資 流動資産=当座資産+棚卸資産+その他流動資産
(2)自社の当座資産・流動資産の読み方
そんな流動資産であり、その中の当座資産だが、それを実務的に、どのように読めば良いのだろうか。
会計の定義上、流動資産は1年以内に資金化できる資産だから、いわゆる会社の支払能力という見方ができる。
しかし、当座資産は、キャッシュであり、またもう販売した債権だから、資金源として考えることにはあまり問題はないが、
棚卸資産やその他流動資産は支払能力として見るのはどうだろうか?
これはそれぞれの企業ごとで実態は違うので、それぞれの企業で判断する必要があるが、
まるまるそのまま、全額を支払能力として見るのは問題がありそうに思われる。
したがって、マクロ的に自社の支払能力を見る方法として『流動比率』が紹介されるが、
この流動比率にはそのような問題があるので「200%程度」ではありたいと言われるのは、そんな所以による。
マクロ的支払能力 流動比率=流動資産÷流動負債×100
流動負債とは、会計的には「1年以内に返済しなければならない他人資本」と定義されている。
従って、その総額が1年以内の返済しなければならない資金なので、全支払能力である流動資産と比べることによって、
おおよその自社の支払能力が読めることになる。
しかし、この流動比率が200%だから安心していいものなのかどうかは、
実態をよく知っている経営者自身が判断すべきことであって、「200%以上だから安心」とは一概に言えない。
そこでもっと確実な読み方が「当座比率」だ。
これだと支払能力のよりどころが「現預金」と「売上債権」なので、流動資産よりグ~ンと支払能力の精度が上がる。
これで読めば、十中八九間違いなく、支払能力が読める。
現実的な支払能力 当座比率=当座資産÷流動負債×100
これだと、ほぼ間違いない支払能力と思われるが、しかし回収できない債権をいつまでも計上したままの企業も少なからずある。
それは対外的なことも考え、そうしているのだと思われるが、その是非はともかく、読む際はそうであれば、それを除外して読む
必要がある。
この指標は、債権はその後も毎月発生してくるので、「7~8割程度あれば良い」と書かれている書籍が多いようだが、
実務的には常に「100%超」になるように経営をすべきだと思われる。
最後に、超シビアに支払能力を読むには「手元資金比率」がある。
これは現預金と流動負債を比較するわけだが、これだと確実な支払能力が読め、安全な経営ができるようになる。
超シビアな支払能力 手元資金比率=現預金÷流動負債×100%
これは支払能力というより、安全な経営を見る指標と理解したほうがよいかもわからない。
無借金経営をしている企業では、この「手元資金比率」が100%を超える企業が多くみられる。