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700.人材力を高める 経営理念

2025年3月28日 印刷用ページ

 中小企業には限られた人材しかいないので、なんとしてでも、いまある人材力を高めたいと経営者なら考えます。

その人材力を高めるための根底の一つが、前回の「社是」の制定であり、まずはそれによって士気の向上を図りたいものです。

 それを全員に浸透させるためにも認識すべきことは、人はそれぞれ違う人生を送り、違った価値観を持っているということです。

社是はそういう人たち全員に対して浸透させなければならないのです。

そのためには自分の哲学ともいえる社是を常に客観視し、自分が考えるような理解と納得感を全員が持ってくれるかどうかを常に

考えねばなりません。

そこのところを経営者自身がよく理解し、より全員が理解し納得できる社是にしようという姿勢を持たない限り、経営者思い上がり

の社是となってしまいます。

 また、そのようなことを指摘してくれる人は残念ながら周りにはおらず、自分で気づくしかないのです。

だからこそ、経営者には謙虚な姿勢が強く求められるのです。

そしてそのような姿勢を持たない経営者に、自社の人材に対しての不満を口にする人が多いということも事実です。

 今回は社是を一層具現化した、「経営理念」について説明します。

 

1 経営理念とは

 いろいろな言い方ができますが、経営理念とは社是に基づいた、社会へ向けたメッセージといえます。

社是が社の使命を示す言葉だとすれば、経営理念はそれに基づいた社会に対する宣言メッセージです。

したがって、わかりやすい言葉でなければなりません。

また、誤解されない言葉でなければなりません。

 さらに、社会とは、マーケットであり、取引先であり、広く一般社会であり、自社でありますが、

そこでよく抜けているのが、一番に近くに存在する社会である「社員とその家族」です。

このことが経営理念にも宣言されており、その貢献に向けた経営でないと、社員はついてきてはくれません。当たり前です。

しかしながら社員に触れずに、お客様を大切にしよう、取引先とともに発展しよう、社会に貢献しよう、会社の発展に尽くそうと

だけ宣言している経営理念は多く見かけますが、社員に対する約束も宣言している経営理念はあまり見かけません。

 したがって、経営理念とは、社員、マーケット、取引先、社会、そして自社に向けたメッセージでないと、経営理念で社員の士気

を向上させることははできません!

 

経営理念に社員向けたメッセージもないと社員の士気を向上させることはできない

 

 

2 経営理念の効果

 では、経営理念の効果や効用について考えてみると、次のようなことが挙げられます

(1)経営の方向性や判断基準が明確になる

(2)企業としてのイメージをアピールできる

(3)全員のモチベーションを向上させる

 

 具体的には次のような効果が現れます。

①全員の意識がまとまる

 経営理念で企業の将来像が示されていますので、全員が経営理念に基づた業務遂行ができるようになります。

 さらに長期的な目標を提示していることにもなりますので、全員が今後の展望を見据えた行動を起こせるようになり、

 チームワークや組織力、士気も向上します。

 経営理念を浸透させることで全員がいま何が求められているのかを理解でき、社員と社長との信頼関係も築けることになります。

 さらには、常に新しいことに取り組んでいこうという、高いモチベーションにもつながります。

②良い企業文化が構築される

 企業文化とは、創業時からの伝統や経営者の考え方で形成されきた、企業内の価値観や行動様式のことです。

 経営理念によって全員の考えや方向性がまとまってくると、その企業文化が自然に構築されていきます。

 良い企業文化は全員が仕事に対して高い意識を持たせることになり、事業の効率化や現場のパフォーマンスも向上さます。

 優れた企業文化はやる気のある人材確保にもつながり、現代の激しい企業競争においても優位に立つことが可能となります。

 さらに企業文化は会社のイメージアップにも結びつき、会社のブランドイメージも高めてくれます。

③モチベーションが高まる

 一般的に、経営理念において、顧客に対する貢献や自己研鑽、働き甲斐、社会貢献などは打ち出していますが、

 それだけでは社員自身の将来がどうなるかはわかりませんので、それだけではモチベーションは向上しません。

 したがってそれだけではなく、社員自身に対する幸福の追求を経営理念に加えることによって全員が何のために仕事をやるのか、

 明確になりますので、より業務に打ち込めるようになります。

 そのような企業理念を浸透させることで全員のモチベーションは向上し、また人としての成長にもつながります。

④人材採用力を高める

 経営理念は企業がどのような考え方で人を育成し、どのような方向性で活動しているのか、外部に示していますので、

 会社が求めている人材を理解してもらいやすくなり、以下のような効果が期待できます。

 1.経営理念に共感した、士気の高い人材を獲得することができる。

 2.経営理念に共感した人材は、高い意識と幅広い視点を持った行動ができる。

 3.結果的にそのような人材が集まると、企業にとってはイメージアップにもつながり、企業競争でも負けない会社となる。

 

経営理念は全員の意識を一つにまとめ、モチベーションを向上させ、良い企業文化を構築し、

人材採用にも効果を発揮する!

 

 

3 経営理念の作り方

 経営理念を考える場合のポイントとして、次のようなことが挙げられます。

(1)企業理念を読み解く姿勢

 経営理念を考える場合には、まず企考えた業理念を深く読み解くことが大事です。

 経営理念はおよそ、使命:Mission、志:Vision、仕事の価値観:Value、行動指針:Wayの4要素で構成されます。

 企業そのものの理念をよく自問自答し、その上で「どんな企業にしていきたいのか」を決め、経営理念として4つの要素に

 落とし込んでいきます。

 1.使命:Mission   経営者【主体】としての目的を明確にして、社員【客体】が使命として受け止められることを考える。

 2.志 :Vision   事業の将来像を描き、どこに向かっていけばそれが実現できるのか、その方向性を定める。

 3.価値観:Value  事業活動における判断基準と仕事の価値観を決める。

 4.行動指針:Way 事業の将来像の実現に向けて、具体的な行動基準を示す。

 

(2)めざす将来像を考える

 どのような企業になりたいのか、どのような事業内容にしていきたいのかと、将来像をしっかりと考えなければなりません。

 数年後にはこんな企業になっていたいと長期的な期間で目指すべき姿を具体的に考え、それに向かって目標と目指す方向性を

 次のように設定することが重要です。

 1.どのような分野で、どのような事業で企業を展開していきたいのか

 2.働く人たちにどのようなスキルや技術を持った人材になってほしいのか

 3.働く人たちの将来に対してどうコミットメントするのか

 4.社会に対して自社はどのような活動で貢献していきたいのか

 このようなことを文章化していくことで、働いてもらう人やお客様、取引先企業などに対して、企業の目的と目指していく姿を

 わかりやすく伝えることができます。

 

(3)どんな人にでも伝わりやすい内容にする

 経営理念は全員で共有する重要な価値観です。

 経営理念を求心力として、全員同じ方向に向くためにはわかりやすく伝わる内容にすることが、浸透させる秘訣です。

 経営理念を深く理解することで、全員が働き甲斐ややりがいを見出し、高い意識で仕事に取り組むきっかけになります。

 経営理念を実践するに当たって、より多くの人たちに「企業のあるべき姿」と「目的を実現させるための行動基準」を示していく

 ことが、社会的価値が得ることになります。

 経営理念をどんな人にでもわかりやすい言葉でつくることが、企業のイメージアップにもなります。

 このようなことから、キャッチコピーのように簡潔にまとめることも重要になってきます。

 

(4)経営理念は納得できるまで何度でもつくり直す

 経営理念は会社を経営していく上で、最大の判断基準、価値観となります。

 したがって、一度作ったならもう変えることはしないと考えるより、時代も変われば、社会も変わり、人も変わりますから、

 変えることを恐れないことです。いつまでも堅持する姿勢を取っていると、それが社内の硬直化を招きます。

 したがって

 1.見聞を広め、知識を深め、価値観を練磨していき、独自の視点を持つことが大切です。

 2.試行錯誤を繰り返し、成し遂げるべき使命や役割に気付くことが重要です。

 経営理念に終わりはありません。時代・社会常識・人の変化に準じた、柔軟な姿勢で常に練り直すことが大事です。

 

経営理念の作成には終わりはない!

 

(5)定期的に見直す

 このようにして出来上がった経営理念ですが、先ほども言ったとおり時流や状況によって合わなくなってしまうことがあります。

 したがって、頻繁に変えるものではありませんが、常に見直す姿勢は持って、社会の状況に応じて変えていくことも重要です。

 社会的状況だけでなく、企業規模や従業員数が大きくなって変更が必要な場合もあります。

 むしろ、経営環境は変わるのですから、ある意味、経営理念は見直していくのが常識なのです。

 

 

4 経営理念の事例

 ここで、著名な企業の経営理念をいくつか見ていきます。

①コメダ

 珈琲を大切にする心から通して、お客様にくつろぐ、いちばんいいところを提供します

②グリコ

 おいしさと健康

③三幸製菓

 (お客・取引先・従業員)三つの幸せの実現

④ニトリ

 住まいの豊かさを世界の人々に提供する

⑤プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)

 世界の人々の、よりよい暮らしのために

⑥グンゼ

 人間尊重と優良品の生産

⑦TOTO

 愛業至誠(奉仕の精神でお客様の生活文化の向上に貢献し、一致協力して社会の発展に貢献する)

⑧JAL

 全社員の物心両面の幸福を追求

⑨ANA

 あんしん、あったか、あかるく元気!

⑩H.I.S.

 自然の摂理にのっとり、人類の創造的発展と世界平和に寄与する

⑪コナミ

 価値のある時間を提供

⑫サンリオ

 ほんの小さな贈り物が大きな友情を育てます

⑬松竹

 日本文化の伝統を継承、発展させ、世界文化に貢献

⑭東宝

 健全な娯楽を広く大衆に提供すること

⑮オリエンタルランド

 自由でみずみずしい発想を原動力にすばらしい夢と感動 ひととしての喜び そしてやすらぎを提供します

⑯Google

 世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること

⑰Amazon

 地球上で最もお客様を大切にする企業を目指しています

⑱Apple

 アップルに経営理念はありません。

 

中小零細企業は確かに限られた人材しかいませんが、しかしトップと従業員の距離が身近というアドバンテージがあります。

トップの姿勢が変われば従業員の姿勢もすぐ変わる、その処方箋が「経営理念」です!

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