411.図解 事業戦略策定 27
2019年4月26日
事業戦略策定第27回は『競争に負けない企業組織 最強組織の法則』です。
戦略論の13回目です。
「うちの社員は・・・」と嘆く経営者の方もよくおられますが、そのような悩みをお持ちの場合は、ぜひ、一読してください。
ヒントが見つけられるかもわかりません!
『最強組織の法則』は、アメリカ経営学者ピーター・センゲが1990年に発表した企業組織運営理論です。
これからの企業組織は、ただ経営者の指示に従うだけの組織ではなく、社員自身の意欲と学習能力に基づいて、
『やる気』を醸し出す学習をするような企業組織であるべきだといいます。 まったく、その通りだと思います。
なお、その学習する組織を「ラーニング・オーガニゼーション」と呼びます。
1 最強組織、全員で学習し意欲と能力を高める組織を構築する5つのポイント
(1)システム思考
システムは相互関連が整理されていて、初めて機能します。
それと同様に、システム思考とは「物事の相互関係を確認したうえで全体構造を理解する」ことです。
つまり、「木を見て、森を見ず」ではなく、「木を見て、森も見る」という視野です。
私たちも「自分の持ち場だけを理解すれば良い」というものではなく、全体を理解して、初めて自分の力や能力を
最大限活かせることになります。
(2)自己マスタリー
マスタリーとは「習熟度」のことをいいます。
各人の習熟度を高めることによって組織の活力が生み出され、学習する組織構築の基礎となります。
絶えまざる学習、学習意欲が大切です。
(3)メンタルモデルの克服
メンタルモデルとは、私たちの中にある「固定観念」のことをいいます。
この固定観念が、時代や環境の変化に対する障壁となるのであり、それを克服することが、個人にも企業にも求められます。
つまり、個人も組織も常に固定観念を克服する、『クリティカル・シンキング』が重要だということです。
『クリティカル(critical)』とは、「批判的な、批判眼のある」などという意味です。
クリティカル・シンキングを直訳すれば「批判的思考」となりますが、ただ物事を批判的に捉える思考ということではありません。
クリティカル・シンキングは、目の前にある事象や情報を鵜呑みにせず、「それは本当に正しいのか」あるいは「本当にベスト
なのか」などと常に自問し、改善思考をもって物事を見て、惜しみなく改善をしていくということです。
※いま新入社員が入社してくる時期ですが、「先輩を見習って、早く1人前になります!」では、進歩はありません。
「もっと良くする方法はないのかという目で常に見て、会社をさらに進歩させていきます!」という少々生意気ぐらいの姿勢が
正しい姿勢ということです。
(4)共有ビジョンの構築
共有ビジョンとは「経営哲学や経営理念を全員で持つ」ということです。
しかし、ただ単に唱和をする、暗記をするなど、うわべの経営理念の共有ではなく、社員全員が心底そう思うように、
経営者が常に社員と語り合うことが大事であるということです。
(5)チーム学習
一人一人が学習すればよいということではなく、組織として、「全員が学習する」ことが大切だということです。
現在、素晴らしいと言われている企業も、初めから素晴らしい企業であったわけではありません。
全員で学習することを心がけて、現在の素晴らしい企業になったのです。
2 個人の学習を通して学ぶ組織、ラーニング・オーガニゼーション
学習とは学生時代と同じように、知識や情報を得るだけのことではありません。
「望む結果を得る能力開発」が社会に出てからの学習です。
そのためには、自己マスタリーである習熟度を高め、同時にメンタルモデル「固定観念」を克服しなければなりません。
そこで必要となるものが、共有ビジョンである経営哲学や経営理念であり、それを組織全体に植え付けるためには
「チーム学習」(全員学習)することが重要となります。
そのような組織を、『ラーニング・オーガニゼーション』と言います。
3 経営者の役割
そのような中での経営者の役割について、ゼンゲは次の3つを挙げています。
(1)経営者は思考力を身につける
まず、経営者自身が思考力を身につけることです。
そのためには、時間を確保する必要がありますが、多くの経営者は「時間が割けない」と言い訳をします。
したがって思考力を身につけるための前提条件として、自己の習慣を変える必要があります。
(2)経営者はチーム学習を促進する
チーム学習の重要性は認識していても、放任しておくと、チーム学習がなされるという保障はありません。
したがって、経営者自らが、チーム学習をさせるように促さなければなりません。
(3)経営者は共有ビジョンを描き、浸透させる
最後に、共有ビジョンの策定とその浸透です。
起業したのは経営者自身です。したがって、ビジョンの策定は『経営者の専権事項』です。
なぜ、自分はこの事業をやろうと思ったのか、振り返って考え、それを従業員に語り続け、従業員に浸透させることは
経営者の重要な役目です。
企業組織全体の中で経営者としての自分の持ち場を理解し、
体験と学習により習熟度を高め、常に物事を批判的に捉えて高みを目指し、自社の仕事の尊さを知り、全員で切磋琢磨を続ける。
そうすることで『最強組織』を構築できると、センゲは情熱を持って言っています。
ある意味、前回の『プロフェッショナル・マネジャ』で「経営者は自分を犠牲にする覚悟があるのか」と通ずるところがあります。
戦略を考えるにあたって重要なことは、『思い込み』なるものを打ち破ることです。
私たちは思いのほか、思い込みに囚われて、生活や仕事をしています。
その結果が「いま」であることを忘れてはいけないと思います。
違う結果を得たいと思うのであれば、『思い込み』を打ち破るしかありません。